ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

奇跡のひと マリーとマルグリット

2015-06-05 21:04:24 | か行

こちらは逆に、割と想像どおりだった。


「奇跡のひと マリーとマルグリット」65点★★★☆


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19世紀末のフランス。

聴覚障害をもつ少女たちが暮らす修道院に
生まれつき目と耳が不自由なマリー(アリアーナ・リヴォアール)が
父に連れられてやってくる。

教育を受けたことのない彼女は
まるで野生児のように暴れ回り
手が付けられない。

たった一人、シスター・マルグリット(イザベル・カレ)は
マリーになんとか言葉を教えようと
孤軍奮闘するのだが――?!


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三重苦で生まれたマリー・ウルタン(1885~1921)と
彼女を教育したシスターの実話がもと。

マリーを演じた
アリアーナ・リヴォアールはなかなかの存在感で
(耳が不自由な彼女は、これが演技初挑戦だそう)


題材にしては、時にユーモラスな描写もあり、
湿っぽくない。

舞台となるフランスの修道院の
明るい光、美しい自然も心を洗ってくれます。


全てに怯えているのか
野生動物のように暴れるマリーを
並大抵ではない辛抱で教育するシスターには頭が下がる。

身体の弱いシスターが療養に行き、
何も聞かされずに残されたマリーが
シスターを「アー」と呼びながら探し回る様は

まるきり保護したての子猫のようで
どれだけの不安とさみしさかと、胸が痛んだ。


最後まで湿っぽくはないけど
この展開はあまりにも並大抵な気もする。


それに
あれだけ暴れていたマリーが
何をきっかけに髪をとかさせるのか?
何をきっかけに最初の言葉を覚えるのか?

明確には描いていなくて、
あえての演出だとしても
うーんやっぱりそこが肝心では? という気持ちも残る。


プレスにあるマリーの手記に
「かつては、触れるもの何もかもに怒りを憶えました。
何も理解できなかったから」という一文があるけれど

せっかく実在の人物がこう残しているんだから

そうそう、こういうマリーの内面をもっと
描きこんでもよかったのに~と感じました。


★6/6(土)からシネスイッチ銀座ほか全国順次公開。

「奇跡のひと マリーとマルグリット」公式サイト
コメント
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