これも見ておくべき1本。
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「沖縄うりずんの雨」76点★★★★
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老漁師とカジキの闘いを撮った
「老人と海」のジャン・ユンカーマン監督が
(来日歴45年、日本語ペラペラ!)
沖縄の歴史といまをじっくり撮ったドキュメンタリー。
悲しみと怒りと涙がこみあげ、
沖縄の抱える問題の根深さにあぜんとする渾身の1本です。
映画は4章に分けられ、
まずは1853年、ペリー来航(!)から
沖縄の侵略の歴史をじっくり見せる。
どんだけ遡るのかと最初はびっくりしたけれど、
沖縄戦→本土復帰→基地問題が、ひと続きの問題であることが、
平明で公正な描き方で、しっかりと伝わってきます。
冷静で、理知的なつくりというのかな、
2時間28分がとにかく濃くて、でも語り口は静かで。
NHKのドキュメンタリーでも沖縄の証言はあるけれど、
ここまで腰を据えてじっくり、長いスパンで問題と向き合うことは
なかなかないですよ。
特に
沖縄戦の経験者から、本土復帰の経験者の
世代をつなぐ証言は本当に貴重だと思った。
そして
ワシが今回、もっともハッとさせられたのは
沖縄の人々への“差別”の問題。
沖縄戦に参加した95歳の元日本兵士が
初めて沖縄の人と出会ったときに
「彼らは芋やタピオカ、豚を主食にしていた。
我々は“大和民族とは違う”と彼らを見下したんです」とインタビューに答えている。
ハッと思った。
ベトナム戦争時代に、コザのバーなどで
米軍兵士たちを見てきた女性カメラマンは
「白人VS黒人の感情と、沖縄人VSヤマト人の構図が似てると思った」
と語る。
続けてこれを聞くことで、みえた。
いままで沖縄の人を差別しているなんて感覚、
みじんも持っていなかったけど
(むしろ芸事に秀でたリスペクトのほうが大きいし)
しかし実際、
基地を沖縄に押しつけている我々の根底には
その差別意識があるんじゃないですか、と。
沖縄の敵は戦争を経て、アメリカ→(基地を押しつける)日本になったんだと思ってたけど
いや始めから日本だったのか!と気づく
衝撃的な経験でした。
それでも元日本兵は
「それが我々の犯した過ちだ」と、はっきりと謝罪する。
なかなかできないことだと思う。
そしてユンカーマン氏がアメリカ人だからこそ
成し得たのかもしれないけれど、
沖縄戦に参加した米兵にも
多くインタビューしていて
さらには1995年に起きた
米兵による12歳の少女暴行事件の犯人にまでアタックし、
そのなかの一人のインタビューを引き出している。
すごいなと驚きました。
“沖縄”をじっくり知ることができる1本。
ぜひに。
★6/20(土)から岩波ホール、沖縄・桜坂劇場ほか全国順次公開。
「沖縄 うりずんの雨」公式サイト