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ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

エゴン・シーレ 死と乙女

2017-01-28 23:07:11 | あ行

100年前に描かれた
モダンな絵にびっくりですよ。


「エゴン・シーレ 死と乙女」69点★★★★


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1910年のオーストリア、ウィーン。

20歳のエゴン・シーレ(ノア・サーベトラ)は
16歳の妹ゲルティ(マレシ・リーグナー)をモデルに絵を描いていた。

その裸体画はパトロンに好評で、
シーレは美術界で頭角を現し始めていく。

シーレの才能を認めるクリムトは
「若すぎる少女を描くのは危険だ」と彼に忠告するが
シーレは聞く耳を持たない。

そして、あるとき事件が起きた――。


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クリムトと並ぶウィーンの画家、
エゴン・シーレの人生を描いた作品。

不勉強なことに、この画家を知らなかったので、
まず、なんとモダンな絵だろうとびっくりしました。


シーレは多くの女性たちと浮き名を流した
スキャンダルな画家として知られ、
わずか28歳で亡くなってしまったそうで

映画はその凝縮された8年ほどの人生を
描いています。


やはり最初にヌードモデルになったのが妹で
(それがすごいよなー
最期のときまで続く
この兄妹の不思議な関係が、大きな軸かな。

妹ゲルティ役の女優さんもとてもいいし。
シーレ役のノア・サーベトラも端正なハンサムだし。

この兄妹の関係の複雑さが
単なる「破滅型の画家の破天荒な人生」だけでない
味になっていると思います。


ただ、シーレが途中で
全盛期のミューズであり、長年の恋人だった女性ヴァリでなく
向いに住む姉妹の妹と結婚する・・・というくだりが
ちょっとわかりにくかったんですよね。

ヴァリはそのことにショックを受けて
それで名画「死と乙女」が生まれた――というキモの部分なんだけど

見ている限り、
ヴァリという人は「私は結婚なんかしない」と強く立脚した女性で
(強がりだったのかな)
シーレの本心もわかりにくかった。


プレス資料の中野京子さん(作家・独文学者)の解説で
ようやくわかったので、ここに参照させていただきますが

モデルというのは
当時の社会の末端ともいえる職業で

だからシーレにとってヴァリはどんなに気の合う最愛の人であっても
最初から「身分違い」というか
結婚なんて論外、な相手だったそう。

なんだ、そういうことだったのか。

だから、いろいろメリットも考えて
そこそこの家のお嬢さんと結婚した、と。

で、そんなことわかっていていたヴァリだったけれども
どこかで「そんなこと超えてゆけ」と、期待していた部分もあったのかなあ
だからシーレの結婚に、ショックを受けた・・・ということなのね。

そうなのかー。

もうちょっとそこ丁寧に描いてほしかったなー。


★1/28(土)からBunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。

「エゴン・シーレ 死と乙女」公式サイト
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