ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

パターソン

2017-08-23 23:38:08 | は行

久々に懐かしい感じの
ジム・ジャームッシュ!


「パターソン」75点★★★★


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ニュージャージー州パターソン市に住む
バス運転手の“パターソン”(アダム・ドライバー)。

朝6時に起き
隣に眠る妻ローラ(ゴルシフテ・ファラハニ)にキスをし
仕事場へと向かう。

仕事が終わると、まっすぐ家に帰って妻と夕食をとり、
愛犬マーヴィンと散歩に出る。

判で押したような彼の生活に
ある日、ある出来事が――?


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うーん、なんか懐かしい!

この「な~んにも起こらないのにおもしろい!」感は
80年代のジャームッシュ節を思い起こさせます。


まず、主演のアダム・ドライバーが
なんともいい佇まい。

彼は毎朝6時過ぎに妻の隣で目覚め、
シリアルを食べ、バスの運転手の乗務につく。
運転中、
乗客の会話に何気なく耳を傾け、ちょっぴり笑う。

彼が拾う、乗客のドラマの切れ端は、
唯一の趣味らしい詩作に役立っているのだろうか。


そして定時に帰宅し、家で夕食を取り
愛犬を夜の散歩に連れ出し、バーで一杯のビールを飲む。

判で押したような生活の積み重ね。
しかしそのフツーの日常が飽きない!!

そして主人公が小さなノートに書き綴る詩だけが
少しづつ出来上がり、時を進んでいくんですねえ。


なんでもない街の風景が、ジャームッシュの目で
センス良く切り取られ
フツーなのにポエティックで
肩の力が抜けていて、
それでもどこか鋭角さがある。

妻役のゴルシフテ・ファラハニは
「彼女が消えた浜辺」(08年)のあの彼女だし。センスいいなあ。


「ミステリー・トレイン」(89年)以来、28年ぶりの
永瀬正敏氏の出演もあり
とにかく映画がまとう空気が、懐かしく、嬉しいんですよ。


ふと思ったんだけど
主人公パターソンが携帯を持っていない、というのも大きいなと。
バスの乗客も、バーの客も然りで

いまどき“誰もスマホを見てない図”なんて、あり得ないですからね。


だから人と人の間に
昔のような懐かしい距離や会話、空気が現れるんだなと。


そして、いま発売中の週刊朝日(9/1号)
永瀬正敏さんにインタビューをさせていただきまして


記事には入りきらなかったのですが
永瀬さんに聞いたところ
ジャームッシュはスマホ持ってないかも?な感じ。
彼との連絡は大抵、直電(じかに電話)で
メールも、奥さん経由らしい。

なんか、いいなあ!

ということで
記事のほうも、ぜひご一読くださいませ~


★8/26(土)から全国で公開。

「パターソン」公式サイト
コメント
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