ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

セザンヌと過ごした時間

2017-08-31 23:57:38 | さ行

セザンヌってこういう人だったのかー
知らなかった。


「セザンヌと過ごした時間」68点★★★☆


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1852年、南仏プロヴァンス。
少年セザンヌは学校でいじめられていたゾラを助ける。

画家を目指すセザンヌと小説家を目指すゾラは
固い友情で結ばれる。

やがてパリに出て
一足先に小説家の道を歩み始めたゾラ(ギョーム・カネ)を頼って
セザンヌ(ギョーム・ガリエンヌ)が上京してくる。

だが新しいスタイルを目指すセザンヌは
サロンに入選できず、
美術学校への入学を断られ
徐々に荒れた生活を送るようになる――。


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冒頭、小説家と画家、
それぞれの創作に必要な道具を丹念に見せていくシーンが美しい。

ディテールに優れた映画なのだな、と予感させます。


実際、監督は丹念なリサーチをし
15年かけて本作を完成させたそうで

なるほど、幼なじみである二人の男の友情や決裂が
とても入念に描かれてる。


おぼっちゃまだったセザンヌと
貧しい出自のゾラ。

固い友情で結ばれながらも
しかし、破天荒で難しい性格も手伝ってなかなか評価されないセザンヌと
先に売れっ子になったゾラの
男と男の複雑な思いが、細かに表現されています。

最近発見されたセザンヌの「最後の手紙」で
この映画を裏付ける内容が発見されたりと
すごくタイムリーでもあり

セザンヌが愛した
南仏プロヴァンスの風景も美しい。


ただ
芸術家としての二人の内面の苦悩よりも
成功や社会的地位をめぐる
男同士のマウンティング要素が大きい気がして

事実かもしれないけど
好みが分かれるかもなあとは思った。
男性はより理解できるのかな、このへんの感情。

二人が延々とケンカ、和解、ケンカ、和解――を繰り返す様子も
ちょっと単調に感じた。


それでも
ゾラについてはほとんど何も知らなかったので
勉強になったし

セザンヌという人が
毒舌だけど寂しがり屋、
人を不愉快にさせるけど、とってもかまってちゃんな人だったと
改めて知り、絵を見る目が深くなった気がいたします。


★9/2(土)からBunkamura ル・シネマほか全国順次公開。

「セザンヌと過ごした時間」公式サイト
コメント
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