ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

愛を綴る女

2017-10-04 23:58:57 | あ行

このヒロインは
マリオン・コティヤールだからこそ成り立った。よね?


「愛を綴る女」70点★★★★


*************************


1960年代のフランス。

ある夫妻がピアノのコンクールに参加する幼い息子に付き添って、
リヨンを訪れる。

だが会場に向かうタクシーの中で、
妻(マリオン・コティヤール)が突然、顔色を変え
「ここで下ろして!」と言い、路地へと駆け出していく。

見送る夫(アレックス・ブレンデミュール)は
複雑な想いで妻を見送る。


そして彼は14年以上前の
妻との出会い、そして彼女に起こった出来事を思い出す――。


*************************


「夫のことはそれほど……」なヒロインの
愛と渇望の軌跡を描く作品。


いやあ、これはホントに
マリオン・コティヤールだからこそ、成り立った話ですよ。
彼女が複雑なひだを持って演じたからこそ
「イヤな女」になり切らず、なんとか許容されていると思う。


ヒロインは
1950年代のフランスの田舎で
生と性に真っ直ぐなゆえに生きづらさを持つガブリエル。

両親に「あの子は病気でヒステリックだから、夫が必要だわ」と
下男のような立場の男を
夫としてあてがわれる。

で、彼女は夫を歯牙にもかけず、
心の病気の療養に行った高級施設で
影のあるハンサムな青年(ルイ・ガレル)と運命の出会いをする。
しかしそのとき
夫が療養所にやってきて――?!というお話で

まあメロドラマ寸前なわけですが
ギリギリで思わぬところに転調する。そのさまがニクい(笑)。


「あなたのことはそれほど」と上からだった妻は
最後にある事実を知り、
痛烈なしっぺ返しをくらうんですよ。
それがちょっと爽快でもあり
単なるメロドラマとなりそうな作品を、寸前で救っていると感じました。

それに
スペインのフランコ独裁政権下を逃れた過去を持つ彼女の夫には
甘ちゃんな妻が想像も出来ないほどの重い過去があるんだろうな――とか。
おそらく妻子を殺されているのかも――とか。

考えさせられました。


ラストの夫のセリフも
えらく響きました。


★10/7(金)から新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

「愛を綴る女」公式サイト

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする