ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

鈴木家の嘘

2018-11-16 23:30:09 | さ行

 

もしやと思ったが

やはり監督の体験が基なのか!

 

「鈴木家の嘘」71点★★★★

 

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その日、鈴木家の長男、浩一(加瀬亮)は

自室で自ら命を絶った。

 

何も知らずに買い物から帰った母・悠子(原日出子)は

部屋に入り、長男の変わり果てた姿を発見してしまう。

 

長女(木竜麻生)が家に帰ったときには

母も倒れ、意識不明だった。

 

その後、長く昏睡状態だった母が

病院で目覚める。

 

喜ぶ長女と夫(岸部一徳)だが、

悠子は息子が死んだ日の記憶を、完全に失っていた。

 

「浩一は?」と無邪気に聞く母に、長女は思わず言う。

「お兄ちゃんは・・・・・・アルゼンチンにいるよ!」

 

母を思ってついた嘘が

次第に鈴木家の運命を動かしていく――。

 

 

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力作、と賞賛したい。

 

でも

いつもどおり予備知識ゼロで観に行ったので

タイトルの「嘘」の中身があまりに「え?」で、

実際、すぐに心に入りきれませんでした。

(いえね、よくある「夫の浮気」とか、「息子や娘の恋人がどうだ」・・・とかの

すったもんだ劇、くらいに思ってたんです。スミマセン

 

自ら命を絶った兄。

残された家族は記憶を失った母に

「お兄ちゃんは、生きてる」と嘘をつく、というストーリー。

 

しかもアルゼンチン、て。(笑)

 

身近な人の自死が

残された人々にどれだけ傷を与えるのか。

それは、まさに生き地獄なんだと、

 

映画は

淡々とユーモアすら交えつつ

そのつらさに正面から向き合う。

 

「え」と見る人を戸惑わせつつ、

嗚咽のような痛みと、人間のおかしみのギリギリのバランスを保っている。

なかなか見事な悲喜劇だと思いました。

 

そして、もしやと思いましたが

やはり監督・野尻克己氏の体験が基だそう。

 

 

経験した人にしか描けない、この物語は

同じ経験をした人に、手を差し伸べ、

あらゆる人に、「もしも、自分の身近な人にそれが起こったら?」を想像をさせ、

そのときを支える、大切な杖になるのではと思います。

 

発売中の週刊朝日、「もう一つの自分史」連載で

お父さん役の岸部一徳さんにお話を伺っています。

映画にも絡め、自身の「家族」をも振り返ったお話、

ぜひ映画と併せてご一読くださいませ~

 

★11/16(金)から新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国で公開。

「鈴木家の嘘」公式サイト

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