もしやと思ったが
やはり監督の体験が基なのか!
「鈴木家の嘘」71点★★★★
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その日、鈴木家の長男、浩一(加瀬亮)は
自室で自ら命を絶った。
何も知らずに買い物から帰った母・悠子(原日出子)は
部屋に入り、長男の変わり果てた姿を発見してしまう。
長女(木竜麻生)が家に帰ったときには
母も倒れ、意識不明だった。
その後、長く昏睡状態だった母が
病院で目覚める。
喜ぶ長女と夫(岸部一徳)だが、
悠子は息子が死んだ日の記憶を、完全に失っていた。
「浩一は?」と無邪気に聞く母に、長女は思わず言う。
「お兄ちゃんは・・・・・・アルゼンチンにいるよ!」
母を思ってついた嘘が
次第に鈴木家の運命を動かしていく――。
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力作、と賞賛したい。
でも
いつもどおり予備知識ゼロで観に行ったので
タイトルの「嘘」の中身があまりに「え?」で、
実際、すぐに心に入りきれませんでした。
(いえね、よくある「夫の浮気」とか、「息子や娘の恋人がどうだ」・・・とかの
すったもんだ劇、くらいに思ってたんです。スミマセン)
自ら命を絶った兄。
残された家族は記憶を失った母に
「お兄ちゃんは、生きてる」と嘘をつく、というストーリー。
しかもアルゼンチン、て。(笑)
身近な人の自死が
残された人々にどれだけ傷を与えるのか。
それは、まさに生き地獄なんだと、
映画は
淡々とユーモアすら交えつつ
そのつらさに正面から向き合う。
「え」と見る人を戸惑わせつつ、
嗚咽のような痛みと、人間のおかしみのギリギリのバランスを保っている。
なかなか見事な悲喜劇だと思いました。
そして、もしやと思いましたが
やはり監督・野尻克己氏の体験が基だそう。
経験した人にしか描けない、この物語は
同じ経験をした人に、手を差し伸べ、
あらゆる人に、「もしも、自分の身近な人にそれが起こったら?」を想像をさせ、
そのときを支える、大切な杖になるのではと思います。
発売中の週刊朝日、「もう一つの自分史」連載で
お父さん役の岸部一徳さんにお話を伺っています。
映画にも絡め、自身の「家族」をも振り返ったお話、
ぜひ映画と併せてご一読くださいませ~
★11/16(金)から新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国で公開。