ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ウィンターズ・ボーン

2011-10-26 21:54:49 | あ行

相当に批評筋に評判のいい映画。
よかったけど
うーん、そこまで……かな?(あまのじゃく)

「ウィンターズ・ボーン」70点★★★☆


ミズーリ州の山あいの土地で
病気の母と幼い弟妹の面倒をみる
17歳の少女リー(ジェニファー・ローレンス)。

わずかな生活費で
ギリギリの生活を強いられている彼女は、

長く不在である父のせいで
なんと家までも
没収されそうになってしまう。

弟たちを守るためには、
期限までに父を探し出さなければならない。

リーは気丈に
父の行方を探ろうとするのだが――?!


寒々しく、現代から打ち捨てられたような
田舎町の風景と、

そこに生きる
社会の下層域にいる人々の姿が

強烈に印象的な映画です。


番長好きな「フローズン・リバー」に
ちょっと似た雰囲気がありますが、

そこで生き抜こうとする主人公が
わずか17歳の少女だというのが最大のポイント。


彼女は家族を守ろうと
近隣の家々をまわり、
父の行方を探そうとするんですが、

小さな村で
周りはみなほぼ親戚くらい近いのにも関わらず
誰も助けてはくれない。

それどころか
「関わるな」と
殺されるほどに威嚇されたりする。

こわっ。

威圧的な男たちに、その影で黙する女たち。

「これ、いったいいつの時代?」と混乱するほどですが
これがアメリカの“根っこ”なのでしょうね。

そんな彼らに臆せず、立ち向かっていく彼女の姿は
幼い子を守る手負いの獣のようでもあり、
目が離せません。

そんな若き母性を演じきった
J・ローレンスは確かに見応えがあります。

ただ、話としてはシンプルで
ちょっと“ひだ”に欠ける感じで

そこが「そこまで?」な所以なんですが

まあ
本年度アカデミー賞主演女優賞にもノミネートされてますし、
世界各国の映画賞139部門ノミネートで
46部門受賞って
すごくないか?

ぜひ、その目でお確かめいただきたく。


★10/29からTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。

「ウィンターズ・ボーン」公式サイト
コメント (2)
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ステキな金縛り

2011-10-25 22:43:28 | さ行

前作「マジックアワー」は
いまだに
思い出すと吹きますよ、ワシ(笑)

「ステキな金縛り」72点★★★★


三谷幸喜氏が
10年以上、あたためていたという
企画の映画化です。


ダメ弁護士エミ(深津絵里)が、
ある被告人の弁護をすることに。

それは
妻殺しの容疑で逮捕された男。

だが、彼にはアリバイがあった。

殺しのあった夜、彼は
ある旅館の一室で
金縛りにあっていたというのだ――!
(プッ。すみません、もう吹いちゃいました)

んなもん、証明できるか!

とりあえず旅館を訪ねたエミの前に、
なんと、金縛りをさせた超本人、
落ち武者の幽霊(西田敏行)が現れて――?!


被告人の無罪を証明できるのは幽霊だけ、という
先の読めないスリル満点の
チャーミングな法廷コメディ。


この幽霊が
ある人には見えて、
ほとんどの人には見えない、というのがポイントで、

ホントに
愉快な話を思いつくなあ、と笑いました。

そしてそれをまた
きちんと組みたてるのがさすが。


正直「爆笑!」はそんなにないけれど、
裏切られることはないはず。

なかでも
「見えない人たちに、どうやって幽霊の存在を知らせるか?」の難関を突破する
そのアッと意外な方法には、笑いました(笑)。

「幽霊なんていない!」と
エミに真っ向勝負を挑む
生マジメな検事役・中井貴一さんが最高だし、

さらに端役の役者まで
最上級に贅沢なのも三谷映画ならでは。

ただ
あのアイドルは必要だったかなア
ちょっと長くなったかナアとは思うけど

まあそれはそれで。

どうぞ楽しんでください。


★10/29から全国で公開。

「ステキな金縛り」公式サイト
コメント (4)
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ミッション:8ミニッツ

2011-10-24 22:01:32 | ま行

悪くない。悪くはないんだけど、
なんか猛烈に……惜しい!


「ミッション:8ミニッツ」58点★★★


「月に囚われた男」ダンカン・ジョーンズ監督の新作です。


青年コルター(ジェイク・ギレンホール)は
シカゴ行きの列車の中で
眠りから覚める。

目の前にはチャーミングな女性(ミシェル・モナハン)が座っていて
親しげに話しかけてくる。

が、何かがおかしい。

オレは確かアフガニスタンで
ヘリコプターに乗っていたんじゃなかったっけ――?


混乱するコルター。
そして数分後、列車を悲劇が襲った――!

なぜコルターはそこにいたのか?
次第に彼の役目が明らかになり――。


以下、ネタばれはしませんが
かなり第一印象が重要な映画なんで、

「何も知らずに見たほうがおもしろそう!」という人は
ここまでにしておきましょう(笑)。


要は主人公が
8分間の体験を繰り返し、
テロリストを特定するという、サスペンスなんですね。


タイムトラベルとも違う
“残像”という概念は面白いし、

なんで8分間なのか、とか
どうやってそういうことになってるのか、とか

理系的な複雑なメカニズムは
全て説明でわかんなくても、
まあなんとなく腑にも落ちます。

落ちるんですが……これがねえ
最後の最後でわかんなくなっちゃった。


監督はデヴィット・ボウイの息子である
ダンカン・ジョーンズ氏(40)。

なかなかのイケメンであり(笑)
古風でありつつ感覚鋭いSF的感性と、
理系脳の持ち主のようで、

前作「月に囚われた男」は
その思いのたけが全てうまく作用した感じなんですが、

今回はちょっと頭のなかと
その造形物がバラけちゃったかなあ。


同じ映像を繰り返し見るのって、
けっこう難しいテクなんですよね。

最近では「バンテージ・ポイント」(08年)が思い浮かびますが

これは
8人の視点から同じ事件を見ることで
謎を解き明かしていくサスペンスで

番長はけっこう楽しかったんですが、

謎解き以前に
「同じシーンを8回も見せられるのはしんどい」
という人もいまして、

そういうもんか、と思った。

で、本作に関しては
確かにちょっとしんどくなりました。
気持ちがわかったよ。

でも、まだ長編2作目だし、
路線もクリアな感じ。

次作に期待します!

★10/28から全国で公開。

「ミッション:8ミニッツ」公式サイト
コメント (2)
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三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船

2011-10-23 20:21:29 | あ行

子どもっぽいタイトルで
いかがなものかと思ったんですが、
予想より楽しかったですよ。

「三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」3D版 70点★★★☆


17世紀のフランスで
国のため、王のために活躍する
三銃士ことアトス、ポルトス、アラミス。


三人はアトスの恋人ミレディ(ミラ・ジョヴォヴィッチ)とともに
ヴェネチアに「ダヴィンチの飛行船」設計図を盗みに行くが、

意外な邪魔が入り、

設計図はイギリスの
バッキンガム公爵(オーランド・ブルーム)の手に渡ってしまう。

そして数年後。

三銃士に憧れてパリに出てきた
若者ダルタニアン(ローガン・ラーマン)は
偶然三人に出会い、そうと知らずに決闘を申し込むが――?!


「バイオハザード」の監督が
デュマの名作『三銃士』を
アクション・エンターテイメントに仕立てた作品です。

三銃士の話って、三銃士がメインなのかと思ってましたが
(だって読んだの大昔だもん……)

メインは三銃士ではなく
あくまでも若者ダルタニアンなんですね。
コレ↓


で、演じるローガン・ラーマンは
「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」(08年)の
主演少年ですが、

なかなかハンサムな青年に成長し、
活発なアクションに淡い恋愛に、と
楽しませてくれます。

さらにミラ・ジョヴォヴィッチが
峰不二子的ポジション、

オーランド・ブルームが敵役、と
なかなか練ったキャスティング。

3Dもキレイだし、
ルイ王朝時代のコスチュームも豪華絢爛。

撮影のほとんどはドイツ各地ロケで行われたそうで、
自然や世界遺産建造物などが
実に美しい。

ジョヴォヴィッチのクルクル変わる衣装も
バッチリ決まってるし
(これぞコスプレ!って感じ)

いたいけな娘さんを
飛行船の先端にくくりつけて
ちょっといたぶってみたり(笑)

娯楽の王道を突っ走る
振り切れ度の気持ちよさがあります。


お子様にもピッタリかと思うので
ポップコーン片手に、
気軽に観てください。

★10/28から全国で公開。

「三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」公式サイト
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第24回東京国際映画祭

2011-10-22 17:29:53 | た行

本日10/22~10/30、
第24回東京国際映画祭がいよいよ始まりました。

特別招待作品には
話題の新作23本がいち早く登場。

日本映画・ある視点や特別上映作品も含め、
観た作品をおすすめ順に
寸評とともに紹介します。


「マネーボール」

ブラッド・ピット主演、
「ソーシャル・ネットワーク」の製作者による実話の映画化。
「ソーシャル~」に似たスタイルで、
野球オンチでもグイグイ引きこまれる。


「永遠の僕たち」

ガス・ヴァン・サント監督。
他人の葬式に出るのが趣味という青年(「ハロルドとモード」みたい!)と
ある少女の出会いが、切なさ全開。
加瀬亮の英語が柔らかでうまい!


「Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」

ヴィム・ヴェンダース監督が
09年に急逝した舞踏家ピナ・バウシュの舞台を映像化。
3Dで舞台を見せる、という試みが大成功。


「ステキな金縛り」

来週末公開。三谷幸喜監督のコメディ。
幽霊(西田敏行)がたった一人の証人、という法廷劇。
さすが愉快な話を思いつくなあ。


「がんばっぺ フラガール!~フクシマに生きる。彼女たちのいま~」

福島県いわき市のフラガールたちの復興にむけたドキュメンタリー。
全国キャラバンに密着するのかと思ったら違っていて、
もっと広く、福島の現状を伝えるものだった。
たぶん編集で変化していったのだろう。


「三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」

3Dもキレイだし、コスチュームも豪華。
お子さんとポップコーン片手の娯楽作に最良。


「ゲーテの恋」

あのゲーテの若き時代を、生き生きと描く。
実際に本人、かなりハンサムだったらしい。
監督は「アイガー北壁」のフィリップ・シュテルツェル。
この人、なかなか手堅い。


「ブリューゲルの動く絵」

名画のなかに入っていき、絵の謎を解くような体験がおもしろい
絵画体験型ムービー。
シャーロット・ランプリングが出演。


「アントキノイノチ」

さだまさし原作。
亡くなった人の遺品を整理する仕事、という設定が興味深い。
榮倉奈々&岡田将生主演。


「トーキョードリフター」

松江哲明監督。
震災後、暗い東京の町を漂流する
ミュージシャンに密着したドキュメンタリー。


「ハラがコレなんで」

「川の底からこんにちは」の石井裕也監督。
仲里依紗を豪快な妊婦に仕立て
「こんな世の中だけど、生きてくしかないよ!」と励ます。


「指輪をはめたい」

スケートリンクですっころび、記憶をなくしたサラリーマン(山田孝之)の話。
小西真奈美のコメディエンヌぶりがいい。


ほかにもコンペティション作品、ワールドシネマなど
おもしろそうな作品が満載。

ぜひ映画の祭典をお楽しみください。

「第24回東京国際映画祭」公式サイト
コメント (4)
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