ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

わたしはマララ

2015-12-07 19:47:09 | わ行

今週はAERAの表紙も
マララさんですね。

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「わたしはマララ」72点★★★★


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16歳であの感動的な国連スピーチをし
17歳でノーベル平和賞を受賞した
マララ・ユスフザイさんを

「不都合な真実」の監督が追った
ドキュメンタリー。

とてもすっきり、上手にまとめられていて
しかも難しい話だけでなく
素顔の彼女が見られるのが、まず楽しい。

弟に「横暴だ!」とか言われたり(笑)
割と直球なイケメン好きだったり(笑)

そんなフツーの女の子が
いかにして「マララ」になったのか?
それが明かされる映画なのです。

なんといっても驚いたのは
彼女のお父さんの影響がとても大きい、ということ。
彼女の成り立ちは、まさに
「教育が人を作る」その見本なんだなあと感じ入りました。

所々を
素朴かつ雰囲気のあるアニメーションで
表現したのもセンスいいす。


それに実はワシ、
彼女がなぜタリバンに銃撃されたのか?
あまりわかっていなかった。

なので今回、そこが
とても勉強になりました。

タリバン、最近はISISにもつながっているそうですが
彼らがどうやって人々を支配していくのか
そのやり口のリアルなレポートとしても価値があるし、

さらに、
マララさんの活動を見ていると
世界でどれだけ教育や人権を奪われる女性や子どもたちがいるのか!
驚き、憤慨してしまいます。

同時に、彼女の存在とその意味、
役割の大きさを深く知りました。

充実内容にして
88分というのもスバラシイ。
学校現場での鑑賞もぜひおすすめしたいです。


★12/11(金)からTOHOシネマズみゆき座ほか全国で公開。

「わたしはマララ」公式サイト
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アンジェリカの微笑み

2015-12-03 23:39:24 | あ行

マノエル・ド・オリヴェイラ監督
101歳のときの作品です。


「アンジェリカの微笑み」69点★★★★


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ポルトガル、ドウロ河沿いの街。

ある雨の夜、
孤独な青年イザク(リカルド・トレパ)は
「娘の写真を撮ってほしい」と、お屋敷に招かれる。

そこでイザクが見たものは
長いすに横たわる
美女アンジェリカ(ピラール・ロペス・デ・アジェラ)だった――。


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2015年4月2日に106歳で亡くなった
ポルトガルが誇る世界の巨匠
マノエル・ド・オリヴェイラ監督。

監督が49歳のときに書いた脚本を
101歳になってから撮った、という作品です。

いつも思うのは
「瑞々しいなあ!若々しいなあ!」ということ。
そして艶っぽい。


今回も
まさかアンジェリカが
亡くなっているところから始まるとは……。

死者の写真を撮る風習というのは
「アザーズ」じゃないけど
19世紀末のヨーロッパにあったものだそうですね。
でもまあ、これは“怖い”話じゃない。

アンジェリカにすっかり魅了され
しかし叶わぬ思いにグルグルする青年イザクのもとに
深夜、彼女が現れたりする
ファンタジーな意外性がおもしろく
不思議にハマります。

さらに
カゴの鳥とそれを狙う猫、
物理学論議を交わす人々――と
さまざまな“深読み”要素をはらんでいるけど


しかしそんなに難しいものでなく
死者に魅入られた青年の
はかなく悲しく美しいラブストーリーだと思います。

設定は現代になっているようですが
最初に書かれたのはが1950年代だったこと
イザク青年がユダヤ人であることなどから
ポルトガルにも逃れてきた彼らの背景を想起させ、

それがイザクの
とてつもない異邦人感、常に所在なさげな孤独感の
根っこにあるんだなあと感じました。

そんな“ぼっち”なイザクを演じている
ハンサムなリカルド・トレパ氏は
オリヴェイラ作品の常連であり
監督の孫です。

楽しかっただろうなあ、孫撮るの。
まさに自分の分身だったんでしょうね。

そして
ドウロ河といえば、ポートワインですねえ。


★12/5(土)からBunkamuraル・シネマほか全国順次公開。

「アンジェリカの微笑み」公式サイト
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メニルモンタン 2つの秋と3つの冬

2015-12-02 23:44:20 | ま行

新しいのか?
いや、懐かしい感じか。


「メニルモンタン 2つの秋と3つの冬」70点★★★★


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パリのはずれの街・メニルモンタンに暮らす
アルマン(ヴァンサン・マケーニュ)は

美大を卒業したものの、定職につかず
親友バンジャマン(バスティアン・ブイヨン)と
冴えない日々を過ごしていた。

33歳の誕生日を前に、アルマンは決意する。

「本当にもう、何か起きないといけない」。

だよな、自分!というわけで
とりあえずジョギングに出たアルマンは
キュートな女性アメリ(モード・ウィラ-)に出会うが――。


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「女っ気なし」「やさしい人」
いま最も旬な“やさしくて、でもダメな人(苦笑)”
ヴァンサン・マケーニュ主演。

このぽかんとしたビジュアルが
やけに笑えて、でもこのまんまっす(笑)

これで客が呼べるなんて
ある意味すごいよなア(ごめん!マケーニュ!)

主要人物は4人。

アルマン(ヴァンサン・マケーニュ)と、その親友、
アルマンと出会うアメリと、親友の恋人が

ときに独白しながらドラマを進め、
90分間苦もなく、スルスル観れてしまう。


過去を俯瞰する、未来からの冷めた視点があるかと思えば
「いま、まさに彼女が好きだー!」という
現在進行中な様子も
もう、自由にごちゃまぜになる。

ヌーヴェル・ヴァーグ精神や
ゴダールへのオマージュと評価されているのも
よくわかります。

誰にでもある(ない人もいるのか?)
青春時代を過ぎて、なお
どうすんだ?お前?という

どうしようもない時代を描き
ぐぅ……、となりました。

ただ、まあ
超・個人的な話で「それで?」言われれば
それまでなんですけどね(笑)

ちなみに。
アメリが前カレとデートするカフェで
頼んだワインはAOCマディラン。

ポー川流域出身だという
親友バンジャマンの家で出ているのは
アルマニャックでしょう。

雪山でチーズフォンデュと合わせているのは
サヴォワの白あたりでしょうか。

セバスチャン・ベベデール監督自身が
ポー市の生まれだそうで
なーるほど!ワインにもご当地色が出てる!(笑)


★12/5(土)からシアター・イメージフォーラムで公開。ほか全国順次公開。

「メニルモンタン 2つの秋と3つの冬」公式サイト
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