自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆先手必勝のフォルム

2005年05月19日 | ⇒トピック往来
 その広場は地上1万9400平方㍍(東京ドームの半分足らず)の広さがあり、バスターミナル、タクシー乗降場が連なる。目立つのは3000枚の強化ガラスでつくられた「もてなしドーム」である。能楽・加賀宝生の鼓をモチーフにしたという「鼓門(つづみもん)」がその存在を誇示している。イベント広場に使える地下広場もある。金沢市が170億円をかけて整備したJR金沢駅東口広場の概要である。
金沢の玄関口 

 ここに立つと、さまざまなフォルムが楽しめる。写真は、鼓門と「もてなしドーム」の屋根の連なりである。ガラスとスチール、そして木造が織りなす「都市の甍(いらか)」ではある。しかし、建築的な見地は今回の本論ではない。なぜ、このような建築物をここに出現させたのか、という考察である。この広場は、北陸新幹線のJR金沢駅を想定した広場である。「新幹線の駅が完成していないのに、170億円もの税金を先行的に投入してよいのか、他に税金を回すべきではないのか」と言った議論が計画当初にあった。

 結論から言うと、私は「つくってよかった」派である。実は、どこも新幹線の駅ものっぺりした同じような顔をしている。「金沢の玄関」にあのような駅はふさわしくない、と私も思う。JRは民営化以降、徹底したコスト主義を経営の柱に据えており、百万石・金沢だからと言って特別なフォルムの駅はつくらないし、つくれないのである。そこで、行政が先手を打って、玄関口に170億円を投じた。玄関口に見合う立派な母屋=駅をつくれとのメッセージをJRに対し送ったのである。もしこれで、金沢駅を例ののっぺり駅にしたら、JR批判の世論が沸きあがるに違いない。JR宝塚線の脱線事故で、JR西日本のコスト主義、合理主義がヤリ玉に上がっている折りである。

 北陸新幹線は10年以内に開通する見通しだ。それにともなって近い将来、新幹線金沢駅も建設される。金沢市の先手必勝とも言える作戦がどのような新幹線金沢駅のフォルムとして展開していくのか、そのような眼でこの駅広場を眺めている。

⇒19日(木)午後・金沢の天気  
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