さて、「田之紀」について。
当初は、「狸の化け寺」のような話を候補にあげていて、話自体はしたいけど狸=金玉八畳敷きはやりにくいから編集してやろうかな、どうしようかなあなんて話を相談したところ、先生が
「田能久」とかは?おなじはなしの「田之紀」をやったことがあるから台本渡せますよ。狸がしたいんなら。
いや、狸がしたいわけじゃない。
学生時代に昔話の研究をしていたので、恩師の書かれた資料集を手にしながらこれをいつか落語にできなかとはもくろんでいたので昔話的な話をしたかったのだ。
でも、「田之紀」はいいかもしれない。昔話「たのきゅう」そのものやし。
ただ、そんなにメジャーではないので、音源なし。「田能久」は江戸では音源あるがひとによりやり方が違う。そんな中で一番参考にしたのは「落語ザ・ムービー」の三三さん。
台本は先生自身が江戸落語を焼き直ししたもので、数年前に一度(だと思う)人前でされたネタ。読み上げると自分がイメージしにくいところが多々。先生に手を加えていいと言われたので、毎回の落語教室で、手を加えたところを確認。そこにはわたしならこう思うんじゃないかというところなども反映。今まで古典をそのまま覚えなくてはと思っていたので新鮮な作業だった。そして、セリフ覚えだけならかなり早い段階、昨年の11月頃には終わっていた。
でも、そこから肚に入るまでが長かった。この時点で気が付いたのが自分が納得していないところはほんの数センチ的な感じでも感覚がズレている。なのでなにかしっくりしない。何度も何度も洋服を修正して仕立てるように、とにかく口に出して稽古をして、また、ハメモノも先生に考えてもらって稽古を重ねた。
ところで、「田能久」にしても「田之紀」にしてもサゲが複数存在。これはもとが昔話だったことによるのではないかと。昔話では「めでたしめでたし」で終わるところが落語なのでサゲをつけないといけない。そこで、サゲがあとからついたのでは…。
どうせあとからつけたようなサゲやったら自分で考えようと、『役者』で落とすことに決めた。また、約束をやぶって田之紀がうわばみの弱点を人間に教えることが後味悪くならないように、うわばみに同情しないように、と工夫を。
サゲのひとことのための仕掛けも自分的には入れているつもり。お客さんに伝わったかどうかは分からんが…。
そんなわけでまさに手塩にかけて育てた話。現時点での完成形。
先生の太鼓、やよいさんの三味線を入れてみなさんの前で披露することができて、とてつもなく幸せだと思う。
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