通し狂言 妹背山婦女庭訓
第1部 午前11時開演
初段 小松原の段
蝦夷子館の段
二段目 猿沢池の段
三段目 太宰館の段
妹山背山の段
第2部 午後4時開演
二段目 鹿殺しの段
掛乞の段
万歳の段
芝六忠義の段
四段目 杉酒屋の段
道行恋苧環
鱶七上使の段
姫戻りの段
金殿の段
千秋楽に通し観劇。11時から21時まで…。間、休憩、入れ替えが約2時間。たいそう疲れましたが、毎日文楽に行ってる訳ではないのでこれくらいの荒療治は浸れるということではよいのです。
ちゃんとした鑑賞記はしかるべき人のところで読んでいただくとしてあくまでも感想。
嶋太夫引退ののち、咲太夫も休演…。でも、「忠臣蔵」の通しの時のように「あ、あの人また出てきた」的なあわただしさはなかったと思います。
忙しいこともあり、予習をしてきなかったら休憩の時に近くに座っていたおじさんが連れに「今からの段はアルコールで頭マヒさせとかな、ショック受けるからな」とおっしゃってました。飲んでる方が喜怒哀楽って拡張されるような気もするのですが。それを受けておばさまが「私なんてあらすじ読んでるだけで泣けたわ!自分の身に置き換えて!」
いったい何が起こるというのでしょう…(古典芸能ではネタばれ禁止はないのでこれを聞いても動揺はありません)。
妹背山の段
両側に床が!掛け合いっ!
ロミオとジュリエット的に敵対する両家の娘と息子が川を隔てた屋敷で幽閉されています。政治的な問題が起きそれの身の潔白を証明するために雛鳥(娘)と久我之助(息子)はそれぞれ側室と家臣として朝廷にあがれ、久我之助と結婚できないのなら雛鳥は死ぬというのです。この敵対する両家、娘の親は母親、息子の親は父親で仲は悪いのですがどっちも死ぬっていっちゃうかも?!と互いの相手の子どもは生かさせようとするも二人の子どもは自害の道を選び、それぞれの親が介錯するのです。
ひーーー。でも、文楽に通うと今生ではかなえられないから死を選ぶというのはひとつの形ではあるので私は「互いに想いあえたまま旅立ててよかったね…」と。まわりにはもちろん泣いてる方も。
件のおばさまは娘を思って泣いたのでしょうか?ロミジュリ的恋愛に??
さて、二部。
今度は酒屋の娘、お三輪ちゃんが主人公です。かわいい町娘を使うは勘十郎様。
お三輪ちゃんには家の前の烏帽子職人の彼氏がいます。
が、そこに見るからに高貴な女性が出入りしています。
悋気を起こすお三輪ちゃん。彼氏は誤解誤解っていうけど明らかに怪しいよ!!
実は烏帽子職人は世を忍仮の姿で、今回解説からすっとばして外していますが政治的にあれやこれやある格のあるお家の御曹司。
それにお熱になっているのは、御曹司と敵対する家のこれまた高貴な娘。またロミジュリかっ!
ややこしい…。お三輪ちゃんは若いので悋気の宛先が女に対して。
いやいや、どう考えてもそれにのる男が悪いよ…。どいつもこいつもいつの世も…。
そんな訳で(かなりざっくりしたはしょり方)、高貴な娘のうちに忍び込むとまさに仮祝言をこっそりあげようとしているところ…。
ですが、腰元どもにはばまれおもちゃにされてしまいます。
お三輪ちゃんの切なさが…
ツライ。
段々と勘十郎さん遣うお三輪ちゃんが脱力していくのが分かるのです。
哀しい、辛い。そして、胸が痛い。
さっきは泣かなかった私がここで決壊。
最後は…殺されてしまいます。
息も絶える直前。自分の想い人が御曹司だったこと。自分の死が彼を救うことを知り、喜びの気持ちを吐露します。
でも、
「ああ、もう目が見えない。ひとめ、愛しい人の顔が見たい」
ラストは悪者である蘇我入鹿を倒す手段を手に入れて大団円。
だったのですが、お三輪ちゃんが死んでからはあんまり頭に入らなかった。かわいそう過ぎて。
そう、おばさまが自分の身に置き換えたように私はお三輪ちゃんを自分に置き換えていたのでした。
そんなもんで帰りの電車でも余韻に浸り、男を見る目って大切やなって思いました←そこかい?!