平成最後の年からはじまる上方落語の噺家の世界を舞台にした小説です。
主人公は女性の噺家、甘夏。
女性が男性の社会だった落語に取り込む難しさや兄弟弟子たち含めての若手の悩み。
エンターテインメント(文学)としての作品の基軸と土台になる「落語」とそれにまつわる世界の話。
取材や文献、また実際に見てきた<事実>を取り込んで消化していると思うのは、表現者としての苦悩が描かれていること。
わたしは素人なのでその苦悩の実際は分からないけれど小説という読み物においては共感もしたし、新鮮に感じた描写もありました。
ある日、甘夏の師匠が失踪。
残された弟子たちが「師匠死んじゃったかもしれない寄席」を開催しながら師匠を待つという。
そこで浮かび上がるのは実は弟子たちの背負ってるもの。
大変面白い作品でした。