愛
演出 片岡敬司
NHK大河ドラマ・ストーリーの「天地人」完結編で、チーフ・プロデューサーを務められた
内藤愼介氏の「『天・地・人』に恵まれて」と題された文章に次のように書かれている部分がある。
2009年という「天の時」に、直江兼続という人物に出会えたことそのものが、一つの幸運でした。
歴史的に見ると決して華々しい戦果ををあげたわけではない彼は、従来の大河ドラマでは決して
メインに据えられる人物ではなかったはずです。
しかし彼の生き方は、利益追求の結果生まれたひずみへの反省を迫られている現代人にとって、
確かな指針を示していました。
歴史は勝者だけのものではない、負けた側の思いの上に成り立っているものなのだということを
教えてくれました。
・・・この言葉がドラマとしての「天地人」のテーマであるように思える。
それは、今回・最終回に凝縮されている。
賛否両論、史実と違う等々あると思う「兼続と家康、秀忠、政宗との関わり」なのだが、脚本の説得力は強い。
それは敗者(かもしれない)の論理である「義」と「愛」が、実は普遍的なものであることを描き出し、
最後には、武力に寄らずに、家康を打ち負かしてしまう。爽快!
景勝が新たな謙信公の亡骸の安置場所として選んだ岩屋での兼続・景勝の会話から始まるラストの
20数分、淡々と穏やかに、美しく流れる展開は、その脚本の意味を時折考えさせながら、回想シーン
の懐かしさと共に爽やかで大きな感動を与えてくれた。
八海山中腹での息子景勝の位牌を抱いて兼続「失ったものは多かった。されどわしは、何も残せなか
ったとは思わぬぞ。すべて心に刻まれておる。この目に姿は見えずとも、心に息づく者たちが、わし
らをここまで導いてくれた。」
お船と紅葉をみながら庭での兼続「・・わしは紅葉になれたかの」
お船「我が命を捨て、大切なものを守り抜く。おまえ様は、まさしく紅葉でございました。
だからこそ、景明もおまえ様にならおうとしたのでしょう」
兼続「まことさようならば、すべては皆のおかげよ・・。皆に支えられたからこそ、ここまでこられた」
関ヶ原以降の兼続・お船の生涯は、相次ぐこども達の死があり、決して幸福なものではなかっただろう。
米沢移封という逆境の中でもあったわけだが、そこで発揮された領国経営の才が兼続夫婦を偉人として
歴史に刻みこんだことを思うと、歴史が負けた側の思いの上に成り立っているといえるのかもしれない。
兼続の生涯は60年で終わったわけだが、自分もその年齢に近づいていることを思うと、
「自分の人生は多くのひとたちのおかげで、こここまできた」という思いは、なぜか共感を覚え、
胸にくるものがある。
これで終わりかと思うと寂しくなるが、11ヶ月の長い間、充分に楽しませてもらった。
最後まで兼続を育んだ南魚沼が画面に登場したのも嬉しかった。
総集編を楽しみに待ちたい。
最終回のMVPは、兼続・お船夫婦にしておきます。
演出 片岡敬司
NHK大河ドラマ・ストーリーの「天地人」完結編で、チーフ・プロデューサーを務められた
内藤愼介氏の「『天・地・人』に恵まれて」と題された文章に次のように書かれている部分がある。
2009年という「天の時」に、直江兼続という人物に出会えたことそのものが、一つの幸運でした。
歴史的に見ると決して華々しい戦果ををあげたわけではない彼は、従来の大河ドラマでは決して
メインに据えられる人物ではなかったはずです。
しかし彼の生き方は、利益追求の結果生まれたひずみへの反省を迫られている現代人にとって、
確かな指針を示していました。
歴史は勝者だけのものではない、負けた側の思いの上に成り立っているものなのだということを
教えてくれました。
・・・この言葉がドラマとしての「天地人」のテーマであるように思える。
それは、今回・最終回に凝縮されている。
賛否両論、史実と違う等々あると思う「兼続と家康、秀忠、政宗との関わり」なのだが、脚本の説得力は強い。
それは敗者(かもしれない)の論理である「義」と「愛」が、実は普遍的なものであることを描き出し、
最後には、武力に寄らずに、家康を打ち負かしてしまう。爽快!
景勝が新たな謙信公の亡骸の安置場所として選んだ岩屋での兼続・景勝の会話から始まるラストの
20数分、淡々と穏やかに、美しく流れる展開は、その脚本の意味を時折考えさせながら、回想シーン
の懐かしさと共に爽やかで大きな感動を与えてくれた。
八海山中腹での息子景勝の位牌を抱いて兼続「失ったものは多かった。されどわしは、何も残せなか
ったとは思わぬぞ。すべて心に刻まれておる。この目に姿は見えずとも、心に息づく者たちが、わし
らをここまで導いてくれた。」
お船と紅葉をみながら庭での兼続「・・わしは紅葉になれたかの」
お船「我が命を捨て、大切なものを守り抜く。おまえ様は、まさしく紅葉でございました。
だからこそ、景明もおまえ様にならおうとしたのでしょう」
兼続「まことさようならば、すべては皆のおかげよ・・。皆に支えられたからこそ、ここまでこられた」
関ヶ原以降の兼続・お船の生涯は、相次ぐこども達の死があり、決して幸福なものではなかっただろう。
米沢移封という逆境の中でもあったわけだが、そこで発揮された領国経営の才が兼続夫婦を偉人として
歴史に刻みこんだことを思うと、歴史が負けた側の思いの上に成り立っているといえるのかもしれない。
兼続の生涯は60年で終わったわけだが、自分もその年齢に近づいていることを思うと、
「自分の人生は多くのひとたちのおかげで、こここまできた」という思いは、なぜか共感を覚え、
胸にくるものがある。
これで終わりかと思うと寂しくなるが、11ヶ月の長い間、充分に楽しませてもらった。
最後まで兼続を育んだ南魚沼が画面に登場したのも嬉しかった。
総集編を楽しみに待ちたい。
最終回のMVPは、兼続・お船夫婦にしておきます。