5月18日のCNNのニュースで「インドの謎の鉄柱、1600年経った今もさびない理由とは?」という目を引く見出しの話題が報道されていた。 鉄の構造物が、風雨にさらされながら1600年もの間さびることなくそびえ立つことは建造当時の技術不足を考えると、あり得ないことのように思える。世界遺産に登録されている「デリーのクトゥブ・ミナールとその建造物群」の敷地内には、まさにこの謎を証明するような不思議な鉄柱(高7.2m)がある。注目すべき点は、この鉄柱はニューデリーの猛暑や汚染などの環境的な逆境や経年劣化をものともせず、建造当時と同じように原形を保っていることである。
なぜこれほど長い間、腐食に耐えることができたのか?その謎が解明されたのは2003年のことで、インド工科大学カンプール校の研究者らが、答えを学術誌「カレント・サイエンス」に発表した。鉄柱は主に錬鉄でできており、現代の鉄とは異なり、リンの含有量が高く(約1%)、硫黄とマグネシウムが不足していた。さらに、古代の職人は「鍛接」と呼ばれる技法を使用していたことが判明した。つまり鉄を加熱して叩くことで、高いリン含有量をそのまま維持できたという。論文を執筆した考古冶金学者によると、鉄、酸素、水素で形成された化合物「ミサワイト」の薄い層も柱の表面から発見された。この層は、鉄に含まれるリンの含有量が高く、石灰が存在しないことで触媒的に形成され、柱の耐久性をさらに高めるという。彼は、当時の冶金学者たちの創意工夫を称賛し、この柱を「古代インドの冶金技術の生きた証し」と表現し、その耐久性は歴史的な記録によって証明されている。その中には18世紀にこの柱に向けて発射された砲弾が柱を打ち砕けなかったと伝えられた出来事も含まれており、鉄柱の驚くべき強度が示されているという。
このクトゥブ・ミナールには、2004年9月と2006年2月の2回訪れたことがある。1199年に建造されたミナレットは、当初、世界一の高い1000mもあったが、地震や落雷で先端部が崩れ、今は72.5mである。不思議な建物群であるが、特に有名なのがこの腐蝕しない鉄柱である。見た目はなんていうことはないただの鉄柱に見えるが、その起源にまつわる神話や伝説があるというから興味が惹かれる。錆びない鉄柱ということはよく知っていたが、科学的にもいろいろ分析されていることがこのニュースでよくわかった。インドに旅行する機会があったら、是非一度訪れてみては?
CNNニュース~インドの謎の鉄柱: https://www.cnn.co.jp/fringe/35218778.html
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