ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

発明018 ゴリコのお菓子

2007年07月20日 | 博士の発明

 マナとジラースーの仲がどうなるかに興味がいって、ここしばらく、シバイサー博士のことをすっかり忘れていた。ユクレー屋に行くのは、博士は主に平日、私は主に週末なので、そこで会うことは滅多に無い。よって、この間、私は博士に会っていない。今どんな発明をしているのか、ふと気になって、先日、久々に博士の研究所を訪ねた。

 研究所へは一本道、木立を抜けると約50m前から研究所が見える。その日、私はとても珍しい光景を見た。あの、シバイサー博士が建物の周りを走っているのだ。博士とは何十年という長い付き合いだが、博士が走っている、のを私は初めて見た。
 博士は建物の周りを回っている。私が建物の敷地内に入った時、博士は玄関前を通り過ぎたところ。それは、私が50m歩いてきた間で2度目の後姿であった。建物1周は5、60m位なので、博士は、私が歩くのと同じ程度の速さで走っているわけだ。
 博士が走っている理由は判った。博士の少し前を何か小さな子供らしきものが走っていて、博士はどうも、それを追いかけているみたいであった。しばらく待っていると、何か小さな子供らしきものが右手から現れた。スカートを履いているので女の子のようであったが、顔は、人間の顔とはちょっと違う。彼女は、私に気付いて立ち止まった。

 「やあ、こんにちわ。」と私は彼女に声をかけた。彼女は全く怖がる様子も無く、私に近付いてきた。顔はサル、またはゴリラに近いが、人間に見えないことも無い。
 「だれ?博士の友達?」と訊く。言葉もちゃんとしゃべれる。
 「うん、そう。ゑんちゅ小僧っていうんだ。君の名前は?」
 「私はゴリコ。」
 「そうか、ゴリコちゃんっていうんだ。よろしくね。ところで、君も博士の友達なの?一緒に遊んでいたように見えたけど。」
 「うん、遊んでいたよ。追いかけっこしていた。博士、トロイんだよ。」
 「うーん、トロイか。そうだね。博士は走るのに慣れていないからね。」
 などと話している内に、博士が姿を見せた。走っているのか歩いているのか判らないような動作で、のたのたとこっちに近付いてくる。私に気付く。
 「やー、君か。久しぶりだな。」動作はのたのただが、息は切らしていない。博士もマジムン(魔物)なのである。体はそのようにできている。

 「博士、何だか楽しそうですね。童心に返って鬼ごっこですか?」
 「楽しい?・・・楽しかぁないよ。遊び相手をしているだけだ。子供は遊んで成長するんだ。だから。大人は遊び相手をする義務があるんだ。」
 「なるほど、確かに。ところで、この子、初めて見ますが、どこの子なんです?」
 「あー、他所の星の子だ。2、3週間前にガジ丸が連れて来た。」

 博士がガジ丸から聞いたところによると、その星の進化は、ゴリラのような外見の動物が知的生命体となって、発展した。彼らは元より好戦的で、よって、その星は争いの絶えない星であった。ガジ丸が立ち寄った頃、とうとう自分たち自身を絶滅させかねない大戦争となったらしい。たまたまそこで、ガジ丸はゴリコと知り合って、仲良くなって、彼女が天涯孤独であることを知って、で、地球に連れて来たとのことである。

 「で、毎日、子供の遊び相手をしてるってわけですか。大変ですね。」
 「うん、まあ、しかし、チシャやユーナが子供のときも、私は彼らの遊び相手をしていたからな。全く慣れていないわけでもないんだ。気疲れはするがな。いやいや、それよりもな。この子のお陰で発明のアイデアが浮かんだんだ。」
 「ほう、それは良かったですね。で、どんなアイデアなんです?」
 「君は、ゴリエって知ってるか?」
 「ゴリエって、沖縄出身の漫才師がやっていたキャラクターのゴリエですか?」
 「そう、それ。面白いキャラクターだったが、いつの間にか消えたな。」
 「はい、いつの間にか消えましたね、残念ながら。で、そのゴリエが?」
 「あー、そのゴリエにだな、子供ができた。ゴリエの子供だからゴリコって名前だ。安易だが。ゴリエは、アフリカに住むマウンテンゴリラのボスと結婚した。できた子供がゴリコってわけだ。実際はそうでは無いが、そういうことにしておく。」
 「はい、そういうことにしておきましょう。で?」
 「で、ゴリコは、体はゴリラの血を引き大きく、強く、頭は人間の血を引き、とても賢い。そんで、ゴリコの名前を付けたお菓子を販売するのだ。たとえば、ゴリコキャラメルなんてのを作る。ゴリコキャラメルは一粒で1キロメートル飛べるほど元気の出るお菓子として売り出す。どうだ、良いアイデアとは思わんか?」
 「博士、お言葉ですが、ゴリコキャラメルって、それってきっと、著作権法違反になると思いますよ。中国の偽ブランドみたいですよ。」

  博士は一瞬キョトンという顔をしたが、また、すぐに話を続ける。
 「ゴリコは人間の子供に比べとても大きい。マウンテンゴリラの子供だから当然大きいのだが、その中でも、まるで突然変異したかのように大きい。そのゴリコの名前をつけたお菓子も、彼女に合わせて当然大きくなるのだ。たとえば、オッキーという名前の菓子は細長い棒の形をしたクッキーであるが、それは長さ50センチほどもある。とても大きなクッキーなのでオッキーという名前だ。ゴリコのオッキーだ。」
 「博士!」と私は博士の目を覚ますようにちょっと大きな声を出す。「博士!それって著作権法違反になると思いますよ。グリコのポッキーの偽物ですよ。」
 博士は再びキョトンという顔をしたが、今度は、私の言っていることがちゃんと耳に届き、理解できたらしい。しばらく沈黙した後、
 「グリコのポッキーね、そういえば、そんなのあったな。」と呟いた。

 というわけで、博士の久々の発明アイデア、ゴリコのオッキーは日の目を見ることは無かった。お菓子はそうだが、生身のゴリコは以降、ユクレー島の仲間となる。
     

 記:ゑんちゅ小僧 2007.7.20


緊張するドライブ

2007年07月20日 | 通信-その他・雑感

 台風4号が沖縄島を暴風圏に巻き込んで17、8時間が過ぎた先週金曜日、7月13日の午後4時半ごろ、雨風が弱まった。「お、やっと暴風圏から抜けたか。」と、私はガジ丸HPをアップするために金曜日の職場のある宜野湾へ向かった。
 HPのアップだけが目的では無く、職場の被害状況を確認し、その必要があれば、応急処置を施すことも目的であった。私の部屋は、網を張ってあるベランダの構造物が傾き、その張ってある網の四分の一が吹き飛ばされ、四分の一がボロボロになり、畑のゴーヤーが吹き飛ばされ、ピーマンとナスが倒れる、などの被害があったが、まあ、大きな台風だった割にはさほどの被害では無かった。近辺を見渡しても、木が倒れたり、太い枝が折れたりなどの大きな被害は無かった。アパートのある首里石嶺は、でこぼこした地形となっているせいか、これまでもそうであったが、台風被害は割りと少なめである。
 首里石嶺から宜野湾市へ向かう途中、県道29号線を通る。坂田交差点から数百m行くと、右手にキリスト教短期大学があり、さらに数百m進むと左手に琉球大学がある。この辺りは、右に太平洋、左に東シナ海に挟まれた丘のようになっており、遮るものが少なく、風が吹き抜ける。数年前、大きな台風が襲ったとき、街路樹のアカギがバタバタと何本も倒れたなんて大きな被害があった。職場もそれと近い地形の場所にある。
 
  県道29号線、キリスト教短期大学近辺から街路樹の倒木があり、琉球大学近辺では、たくさんの太い枝が道路に散らばっていた。大きな、頑丈そうな看板が倒れていた。
 職場は、その周辺に木の枝が多く散らばっている。喫茶店の看板が倒れている。掃除道具などを入れる倉庫のドアが、観音開きの1枚が閉じたり開いたりしてバタバタと大きな音を立てている。扉1枚は畳ほどの大きさ。観音開きのもう片方は消えていた。
 周辺に散らばっている大きな枝を片付ける。そして、消えた扉を探そうとした時、風雨が激しくなった。台風のように激しい。ネットで気象情報を見る。沖縄島はまだ暴風圏内にあった。夕方風雨が弱まったのはたまたまだったようだ。消えた扉は諦めて、残った扉がバタバタしないよう応急処置をして、HPアップ作業にとりかかる。
  暴風の中、木の枝が散らばった道を夜暗くなってから帰るのは危険だと思い、アップ作業を急ぐ。ところが、こんな時に限ってパソコンの調子が悪い。ネット接続が不調でアップに時間がかかった。なわけで、暴風の中、木の枝が散らばった道を夜暗くなってから帰るハメになってしまった。・・・怖かった。県道29号線はいたる所で冠水していた。膝丈ほどの水位も数箇所あった。激しい雨で視界が悪い。ブレーキは大丈夫かと心配しながら、木の枝を避けながら、緊張するドライブだった。

 私の緊張するドライブはほんの40分(いつもなら30分の距離)で済み、その後酒飲んで、だらしないいつもの生活に戻るのであるが、日本国のドライブはそういうわけにはいかない。日本国の未来がかかっている。1億2千万人が乗った船の舵取りである。その舵取りは日本国だけで無く、世界の未来にも影響を与える。常に緊張を伴う。
 このところ毎日、選挙カーがうるさい。今も職場の前を通って行った。「うるさい!」と思うが、しかし、議員の仕事は常に緊張を伴う。国民の代表者たちは嵐の夜、障害物の多い道を走るドライバーなのだと思う。暢気なオジサンである私は、うるさいくらいは我慢しようと思うのである。・・・ただ、緊張感の無い議員もたくさんいるが。
          
          

 記:2007.7.20 島乃ガジ丸