ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

見聞録024 ばかばかり

2008年12月05日 | ケダマン見聞録

 週末の夕方のいつものユクレー屋、俺とゑんちゅ小僧が並んで座って、カウンターの向こうにマナがいる。もう臨月という大きなお腹を撫でながら、
 「つくづく幸せを感じるさあ。」とマナが言う。
 さっきまで村の女たちと賑やかにユンタク(おしゃべり)していて、子供を授かるという幸せをしみじみ感じたみたいである。

 「オメェーよー、そんな緩んだ顔ばかりしていたら、そのうちバカになるぞ。」
 「あんたこそバカじゃないの!子供を産むんだよ私は。大自然の法則に則ったことをやるんだよ。それが何でバカになるのさ。」
 「うっ、そうか、それはそうだ。自然と調和した生き方は確かに正しい。・・・おっ、そうだ、それで思い出した。そういう話があったんだ。」
 ということで、ケダマン見聞録その24、『ばかばかり』の始まり。

 ある星の話だ。毎度同じようなことを言っているかもしれないが、その星もまた、環境は地球とほぼ同じ、地球と同じような知的生命体が住んでいる。
 地球と同じく、文明が発達するにつれて人口増加、環境悪化など、その星も大きな問題を抱えていた。各国の政治家、官僚、科学者、有識者たちが集まって対策を練り、一部実行に移してみたのだが、なかなか良い結果を出せずにいた。

 その星には、人類の未来を深く憂える秘密組織があった。そこには世界の政治や経済の有力者や、有能な科学者たちが参加し、その星のあるべき姿についてたびたび集まって会議を開き、その会議で決定された事項を秘密裏に実行していた。
 表の社会の会議で問題にされている人口増加、環境悪化などもむろん彼らは議論した。それらについての対策は、表社会が提言しているものと彼らのものとの間には大きな開きがあった。彼らは諸々の原因となるものをある一点に絞り、それを排除すれば良いとの考えであった。諸悪の根源を抹消するということである。

 「人口増加が生み出した悪がある。それは、バカな人間が増えたということだ。バカな人間は足るを知らず、環境悪化を自身の事として捉えることができない。」
 「その通り、問題は単純だ。バカがこの世に悪を撒き散らしているのだ。よって、彼らを排除すればほとんどのことは片がつく。」
 「諸悪の根源はバカな人間ということだな。」
 「ふむ、確かに。ところで、どうやってバカと利巧を見分けるのだ?」
 「バカ量りという機械を作る。バカかどうか量る機械だ。」
 「ほう、で、その機械でバカと判断された人間はこの星から追放するわけだな。」
 「そういうことだ。それによって、賢い人間だけの星となる。」

  というような会議があって、その数年後には実際に機械を完成させ、企ては秘密裏に実行された。それからさらに数年が過ぎた。星の人口は十分の一になった。そして、そのほとんどが、彼らの求める脳力を満たしていた。お勉強のできる者が残ったのだ。これで問題は解決し、めでたしめでたし・・・となるはずであったが・・・。
 当然のことながら、お勉強のできる者が大自然と対峙し、大自然と調和し、大自然と闘うといった生きる知恵までも身に付けているとは限らない。というわけで、その星の農業や漁業は著しく衰退した。たいへん困ったことになった。
 「これではいかん。」と秘密組織は『ばか量り』を改良した。大自然と共に生きることのできる知恵を身に付けているかどうかも量れるようにした。その数日後、秘密結社は壊滅した。改良した量りで結社の人間を量ったところ、その全てが不合格となったのだ。人類の未来を操作しようとした秘密結社の人間はつまり、バカばかりだったのだ。
     

 ちゃんちゃん・・・ということで、見聞録『ばかばかり』はお終い。場面はユクレー屋に戻る。黙って聞いていたマナは、話が終わってもずっと黙ったままで、何も言わずに台所へ去った。「駄洒落だよ、胎教に悪いねー」と小さく呟く声が聞こえた。

 語り:ケダマン 2008.12.5


2兆円の使い道

2008年12月05日 | 通信-政治・経済

 思いつきが思わず口から出てしまうあっそうだろう総理が、経済政策の目玉としていた定額給付金もどうやら来年に持ち越しとなったみたいだ。「せっかく集めたお金を元に戻してどーする。」というようなことを前に書いたが、持ち越したついでにその2兆円、もっと有効な使い道がないか考えてもらいたい。で、私も1案思いついた。

 全国には多くの休耕農地がある。沖縄にもたくさんある。狭い沖縄に、軍事基地に占領されてさらに狭くなった沖縄に、利用されていない農地がたくさんある。勿体無い。
 そこで、休耕農地の多くある地域に、各自治体が主体となって農業訓練校を作る。訓練生はだいたい100人規模とし、食事付の全寮制とする。学費、食費、寮費は無料。訓練生はつまり、「食う寝る」に困らない。それどころか、月に数万円の小遣いも貰える。その代わり、農業を勉強し、農作業に励んでいただく。
 農作業は休耕農地だけでなく、近隣農家の田畑でも行われる。訓練生は定期的に近隣農家に出向いて、そこの農家から実践訓練を受ける。農家は農作業のノウハウを教える代わりに、作業の手伝いをしてもらえるので大いに助かる。

 2兆円という額があまりに大きすぎて、それにどの程度の力があるかよく分らないのだが、例えば、100人規模の全寮制農業訓練校を沖縄で20校、全国で2000校作ったとする。2兆円で足りるかどうかは、とりあえず棚上げしておく。

  2000校で訓練生が20万人となる。農家にホームステイする訓練生も認めればもっと増える。というわけで、20万人以上が「食う寝る」には困らない身分となる。彼らはまた、訓練校を卒業すればプロの農家になる確率も高い。雇用対策となる。

 全国の休耕農地に作物が実る。作物は特に、現在大いに不足している小麦や大豆などを中心に栽培する。それによって、日本の食卓が必要とする大豆や小麦、その他のものを国産でまかなえるようになる。地産地消だ。食糧自給の問題解決に繋がる。

 近隣農家との交流を深めることによって、「お前、なかなか見込みがある。どうだ、俺の畑を継がないか。」などとなって、農家の継承者不足を解消する。

 休耕農地は概ね過疎地である。そこに訓練校ができ、卒業生によって新しい農家が生まれ、結婚する人もいて、子供が生まれる。過疎問題の解決となる。

 他に、農地が蘇れば自然環境も良くなるのではないかというメリットも考えられる。とにかく、2兆円で全寮制農業訓練校を作ることによって、今まさにリストラに直面している人々を助け、日本の食料自給率がアップし、農家の継承者不足、過疎問題も解決するかもしれない。もちろん、私の思いつきなので、上手く行くかどうかは不明。 
          

 記:2008.12.5 島乃ガジ丸