老頑(ろうがん)という言葉があるのかどうか、私の造語かもしれないが、年寄りの頑固なこと、自己中なこと、ついでに、我儘なことを言う。
先週金曜日の朝、父から電話があった。
「銀行に大事な用があるから来てくれ。」
「今日はダメだ。子供達(従姉の孫達)を遊びに連れて行く約束をしている。」
「そんなの後回しにしたらいい。こっちが大事だ。」
「2週間も前から子供達が楽しみにしてるんだ、それに、もうこっちへ向かっている頃だ。子供たちの気持ちを考えたら中止はできない。夕方ではダメか?」
「夕方は銀行が閉まっている。3時までだ。」
「コザまで行くんだ、3時はとても無理だろう。来週の金曜日ではダメなのか?」
「来週金曜では遅い。何とかならんか?」
「わかった、じゃあ、月曜日に行くわ。」
「あー、月曜日ならいい。なるべく早い時間にな。」
以上が電話の内容のおおよそだが、銀行が開いている時間でなければダメ、ということから、大事な用事とは銀行の人と話をしなければならないような大事、例えば、定期を始めるとか解約するとか、などの大事かもと私は思った。
翌日の土曜日、いつものパソコン講座で実家へ行く。実家へはいつもバスを利用するのだが、この日は、前日、子供達の遊び相手をしてできなかった金曜日の職場の庭掃除があるため、車で行く。午前中で父のパソコン講座を済ませ、午後は庭掃除の予定。
「あー、ちょうどいいところに来た。」と父が言う。来るのは知っていたくせにだ。
「パンとハムとチーズを買ってきてくれ。」と続ける。私は実家へ行く前に、前回頼まれていたキャベツとコーラを買うためにスーパーへ寄っていた。
「欲しいものがあったら事前に電話しろと言っただろう!2度手間じゃないか!」
「あー、今日で無くなったんだ。」と平然とした顔。
「月曜日に来るからその時でいいか?」
「明日の朝食べるのが無いんだ。2、30分じゃないか、行ってこいよ。」ということで、私はあからさまに憮然とした表情を見せつつ、言いつけのものを買いに行った。
さて、今週の月曜日である。朝10時、実家へ行く。行ってすぐに腰砕けとなる。父が言っていた大事な用事とは、5万円引き出すこと、たったそれだけのことであった。
「それだけで俺を呼んだのか!近いんだから、自分で歩いて行けよ。」
「最近歩くのが辛いんだ、死期が近いかもしれない。」
「歩かないから歩けなくなるんだ。」
「何を言っている!僕は毎日散歩してるぞ!」
「散歩してるんだったら銀行まで歩けるだろ?」
「まったく、あー言えばこー言う。親の言うことは黙って聞け。」などと仰る。「あー言えばこー言うって自分のことだろ!」と私は言いたかったのだが、もう諦めた。こんちくしょうと思いつつ銀行へ行った。その帰り道、老頑という言葉を思いついた。
記:2009.8.28 島乃ガジ丸