私の出身高校は名門(自分で言うのも何だが)首里高校。進学する高校を選ぶにあたって、中学三年の担任には「成績が少し足りない」と言われたのだが、成績が足りないのは素行の悪さもあったので、試験の結果だけなら名門首里高校に合格する十分の自信が私にはあった。で、迷うことは無かった。試験前一週間の猛勉強で、見事合格。
高一の春、クラスメートともすぐに打ち解け、多くの友人ができた。美少女の出現率は中学の頃よりはるかに高く、何人もの女子に紅顔は恋をしたが、たったの一つも恋は実らなかった。それでも、思い起こせば懐かしき高校時代、最も楽しかった時代でもある。
高一の春、中学の時にはあまり無かったことを経験した。高校には応援団という団体があり、彼らが新入生に校歌や応援歌を教え、指導するというものであった。「大きな声を出せ!」と怒鳴られながら校歌を歌った。おかげで、小学校や中学校の校歌はほとんど記憶に無いが、高校の校歌は、少なくとも一番だけなら今でも歌える。
仰げば高し弁ヶ岳 千歳の緑濃き所
と始まる。で、首里高校の近くに弁ヶ岳という名の岳があるらしいことを知る。「仰げば高し弁ヶ岳」から、弁ヶ岳とは霊山みたいな場所で、仰ぎ見る高貴な場所であろうというイメージを持つ。校歌の頭に出てきて、名前だけは強く記憶に残った弁ヶ岳だが、霊山などに特に興味を持たなかった当時の私は、訪ねたことは一度も無かった。ガジ丸HPで沖縄の植物を紹介するようになってからやっと、弁ヶ岳を訪れることになる。仰ぎ見る高貴な場所であろうというイメージを持ってから三十数年が過ぎていた。
弁ヶ岳について、『沖縄大百科事典』に記載があった。以下はその抜粋。
弁ヶ岳
那覇市首里汀良町にある丘陵
方言名:ビンヌタキ
首里の東端にあり西原町と接する
那覇市の最高所で、標高約166m
御嶽でもあり、大嶽と小嶽がある。
いずれも国王の祈願所で、大嶽は久高島への、小嶽は斎場御嶽への遥拝所。
「仰げば高し」と首里高校校歌にはあったが、標高は首里城より40mほど高いだけ。もしかしたら「仰げば高し」には、私が昔抱いた「仰ぎ見る高貴な場所」というイメージ通りの、精神的な意味も含まれているのかもしれない。
弁ヶ岳全体が公園となっている。祈願所の他には大きな施設はない。出入口などにベンチやトイレが設置されている。石畳の園路があり、そこが私の散歩コースとなっている。薄暗い中を歩くが、夏は直射日光を避けられるので助かる。
鳥は多い。ヒヨドリ、シロガシラ、メジロ、ウグイス、キジバト、ズアカアオバト、カラスの鳴き声がよく聞こえる。夏になるとセミの声が騒がしくなる。チョウやトンボ、バッタ、カメムシなども多く見られる。植物は、施設のある場所、周囲、出入口近辺は植林されているが、石畳の周りは、多くが自然林だと思われる。
記:2010.7.1 ガジ丸 →沖縄の生活目次