セミ撮りに使われたクモ
子供の手に握りやすい細さの、長さ1~2mほどの竹、その先端を10センチばかり2つに割いて、先を広げ、間に10センチばかりの竹片を挟む。そうすると竹の棒の先は、一辺が10センチほどの正三角形となる。別に正三角形でなくても、一辺が10センチでなくてもいいが、とにかく、竹の棒の先に三角形の面を作れば良い。
蜘蛛の巣を探し、その三角形の面で蜘蛛の糸を絡める。2つ、3つの巣を絡めると、三角形の面にはくまなく蜘蛛の糸が張り付くようになる。
蜘蛛の糸がびっしり絡んだ竹の棒を持ち、今度はセミを探す。竹の棒が届きそうな場所にいるセミ を見つけたら、そっと竹の棒を伸ばし、蜘蛛の糸の絡んだ三角形でセミを捕らえる。その竹の棒を何て言っていたか思い出せないが、子供の頃よくやった遊びだ。
竹の棒に絡める蜘蛛の巣はほぼ決まってクーバーであった。クーバーとはウチナーグチでクモの総称であるが、我々がその頃そう呼んでいたのはある一種のクモ、和名は今回調べて初めて知ったが、チブサトゲグモ。クモといえば屋内ではアシダカグモで、屋外ではチブサトゲグモしか思い出せないくらい、その頃はたくさんいた。
チブサトゲグモ(乳房棘蜘蛛):クモ目の節足動物
コガネグモ科 九州以南、琉球列島、台湾、インドなどに分布 方言名:クーバー
名前の由来は『沖縄大百科事典』に、「腹部周縁の3対の蕀状突起は先端部がとがり乳房状である。和名はこの形状にある。」とあった。私の撮った写真を見ると確かに、根元から円錐状に盛り上がり本体、先端部でもう一段盛り上がりがあって乳輪、先端は小さな棘となって乳首みたいになっている。鏡餅のミカンが円錐になったみたいな形。
木の枝だけでなく、人家の軒先などにも巣を張る。で、最もよく見かけたクモの一つ。見かけたと過去形なのは、私が子供のころは実家のある那覇市の市街地でも多く見たのだが、最近、実家の周辺でも、割りと田舎である私の住まいの周辺でも見ることがない。ただ、田舎に行けば、今でもよく見かけるクモの一つである。
体長は雌10ミリ、雄4ミリ。体の色彩斑紋にさまざまな変異がある。
記:ガジ丸 2010.2.15 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行