ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

チブサトゲグモ

2011年05月06日 | 動物:クモ・その他

 セミ撮りに使われたクモ

  子供の手に握りやすい細さの、長さ1~2mほどの竹、その先端を10センチばかり2つに割いて、先を広げ、間に10センチばかりの竹片を挟む。そうすると竹の棒の先は、一辺が10センチほどの正三角形となる。別に正三角形でなくても、一辺が10センチでなくてもいいが、とにかく、竹の棒の先に三角形の面を作れば良い。
 蜘蛛の巣を探し、その三角形の面で蜘蛛の糸を絡める。2つ、3つの巣を絡めると、三角形の面にはくまなく蜘蛛の糸が張り付くようになる。
 蜘蛛の糸がびっしり絡んだ竹の棒を持ち、今度はセミを探す。竹の棒が届きそうな場所にいるセミ を見つけたら、そっと竹の棒を伸ばし、蜘蛛の糸の絡んだ三角形でセミを捕らえる。その竹の棒を何て言っていたか思い出せないが、子供の頃よくやった遊びだ。

 竹の棒に絡める蜘蛛の巣はほぼ決まってクーバーであった。クーバーとはウチナーグチでクモの総称であるが、我々がその頃そう呼んでいたのはある一種のクモ、和名は今回調べて初めて知ったが、チブサトゲグモ。クモといえば屋内ではアシダカグモで、屋外ではチブサトゲグモしか思い出せないくらい、その頃はたくさんいた。

 
 チブサトゲグモ(乳房棘蜘蛛):クモ目の節足動物
 コガネグモ科 九州以南、琉球列島、台湾、インドなどに分布 方言名:クーバー
 名前の由来は『沖縄大百科事典』に、「腹部周縁の3対の蕀状突起は先端部がとがり乳房状である。和名はこの形状にある。」とあった。私の撮った写真を見ると確かに、根元から円錐状に盛り上がり本体、先端部でもう一段盛り上がりがあって乳輪、先端は小さな棘となって乳首みたいになっている。鏡餅のミカンが円錐になったみたいな形。
 木の枝だけでなく、人家の軒先などにも巣を張る。で、最もよく見かけたクモの一つ。見かけたと過去形なのは、私が子供のころは実家のある那覇市の市街地でも多く見たのだが、最近、実家の周辺でも、割りと田舎である私の住まいの周辺でも見ることがない。ただ、田舎に行けば、今でもよく見かけるクモの一つである。
 体長は雌10ミリ、雄4ミリ。体の色彩斑紋にさまざまな変異がある。
 

 記:ガジ丸 2010.2.15 →沖縄の動物目次
 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『いちむし』アクアコーラル企画発行


オオジョロウグモ

2011年05月06日 | 動物:クモ・その他

 家の外の大きなクモ

 ジョロウグモは漢字で女郎蜘蛛と書く。男としては当然、女郎が気になる。時代劇などを観ているとたびたび耳にする女郎、「岡場所」やら「吉原」とかの女郎、この女郎はつまり、遊女のことで、遊女のような蜘蛛とはいったいどういうことかと気になる。
  女郎には遊女とは別の意味があるかもしれないと思って、改めて広辞苑をひく。別の意味があった。第一義は「身分のある女性」であった。次に「若い女。また、広く女性をいう」で。三番目に「傾城けいせい。遊女」があった。

 そこで、私の興味は女郎からいったん離れる。遊女と併記されている「傾城」とはいったい何ぞや?となる。城を傾けるとは穏やかではない。で、再び広辞苑。
 傾城とは1に「美人」、2に「遊女。近世では、特に太夫を指す。」とあった。城を傾けるのが何故 「美人」なのかについての記載もあった。そのまま引用する。
 漢書「一顧すれば人の城を傾け、再顧すれば人の国を傾く」(美人が色香で城や国を傾け滅ぼす意。)とのこと。一目見ただけで城を傾けるほどの美人ってすごい。
 そんな美人と併記される遊女、遊女はだから、蔑んだ言葉では無いかもしれない。女郎もまた同じで、「魅力的な女性一般」を指すのかもしれない。ジョロウグモの雌は大きくて、体の模様も目立つ。それは「魅力的な女性」といえるかもしれない。

 
 オオジョロウグモ(大女郎蜘蛛):クモ目の節足動物
 コガネグモ科 琉球列島、台湾、インドなど熱帯、亜熱帯各地に分布 方言名:クブ
 女郎というと遊女、しか私は連想しなかったが、念のため広辞苑をみると、遊女の前に「身分のある女性」、「若い女性」などの意味があった。ジョロウグモは黒地に黄色の模様がある。黒と黄色の組み合わせは警戒色であり、よく目立つ。ジョロウグモのジョロウの由来が、容姿に目を惹かれてうっかり触ろうもんなら怪我するよ、ということなら、遊女よりも「身分のある女性」や「若い女性」の方が当てはまるかもしれない。
 本種はジョロウグモよりずっと大きいのでオオ(大)が付く。体長では日本最大のクモとのことで、雌は45ミリ内外もある。雄は小さく、8ミリ内外で、 「成熟した雄は雌の網の中で生活している」らしい。雌に養われているようだ。
 ジョロウグモはあまり見ないが、オオジョロウグモはちょっと田舎へ行けば多くいる。私の住む首里石嶺にもいて、末吉公園でもよく見かける。写真も何枚か撮っているが、それぞれ体の模様が違う。「雌の体色にはいろいろな変異がある」とのこと。
 
 腹側
 
 大きさ

 ジョロウグモ(女郎蜘蛛):クモ目の節足動物 ※写真無し
 コガネグモ科 本州以南、琉球列島、台湾、東南アジアなどに分布 方言名:クブ
 広辞苑には女郎蜘蛛の他、絡新婦という漢字も充てられていた。新婦とは言うまでも無く、結婚したばかりの女性のこと。「絡む」は、蜘蛛なので糸で絡めるということなのだと思うが、絡める相手は獲物だけでは無いようだ。新婦は夫も絡めるようだ。「成熟した雄は雌の網の中で生活している」とのことである。
 絡める雌の体長は20ミリ内外、絡められる雄は8ミリ内外、女性上位ということに疑いは無い。さらに一婦多夫性とのこと。夫たちは妻に養われ、奉仕する。
 その他、「幼体とは成体とでは色彩斑紋がかなり異なる」とのこと。
 「幼体時は雌も雄も同じような色彩をしている」とのこと。

 記:ガジ丸 2010.2.8 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『いちむし』アクアコーラル企画発行


ミナミトビハゼ

2011年05月06日 | 動物:魚貝類

 トントンミー

 トントンミーとはウチナーグチ(沖縄口)で、干潟や浅い潮溜まりにいてピョンピョン飛び跳ねる小さな魚のことである、ということを子供の頃から私は知っている。子供の頃から近場の海でよく目にしていて、トントンミーという名前も、その飛び跳ねる姿にピッタリ合っていてすぐに覚えた。姉の親しい友人にトントンミーという渾名で呼ばれていた人がいた。女子である。よく飛び跳ねる人だったのかもしれない。

 トントンミーとは和語でトビハゼのこと。それも子供の頃に知ったと思う。トントンミーは飛んでいる 様の擬態的表現で、飛びハゼは直接的表現、どちらも解りやすい。
 トビハゼのことを子供の頃からトントンミーと呼んではいたが、それが正しいのかどうか今回改めて調べてみた。沖縄語辞典にあった。トントンミーは確かにトビハゼのことでもあるが、もう一つ、「水切りのこと」ともあった。「水切り」とは、「水面に小石を水平に近く投げ、石が水の上を飛びはねて進むのを興じる遊戯。」(広辞苑)のこと。

 トビハゼは砂や泥の上をピョンピョン飛び跳ねるが、浅い水面の上でもよく飛び跳ねている。水切りのように見えるといっても間違いでは無い。参考文献の一つに、「干潮時にはマングローブの根元・・・満潮時にはマングローブの枝の上にとまっています。」とあった。木の枝にとまっているところもぜひ見てみたい。

 
 ミナミトビハゼ(南跳鯊):海産の硬骨魚
 ハゼ科の海産硬骨魚 方言名:ハーグヮー、トントンミー
 トビハゼが広辞苑にあり、跳鯊と書いて「胸びれは丈夫で干潟を歩くことができる。驚くと跳んで水中に逃げる。南日本沿岸に産。」などとある。本種はより南方に生息するのでミナミ(南)がつくものと思われる。方言名のハーグヮーは、私は初めてこの名を知ったが、ハゼ科のいくつかの総称のようである。
 方言名のもう一つのトントンミー、これは子供の頃から耳に親しんでいる。沖縄語辞典によると、トントンミーはトビハゼの総称で、「地上をトントン飛んでいくので」とのこと。同書には無かったが、私の感覚としてはミーにも意味がある。ミーはウチナーグチで目のこと。トントン飛び跳ねる目ん玉ということだと思われる。
 「水の中にいるのが苦手」とのことで、私の経験でも浅瀬の砂の上にたいていいる。近付くと水の上を飛び跳ねながら逃げ、水にはあまり潜らず、砂の上に止まっている。
 体長7センチ、生息場所は干潟。「小動物を捕らえて食べる」とのこと。
 
 横顔 何とも眠そうな目。

 記:ガジ丸 2009.10.25 →沖縄の動物目次
 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『沖縄釣魚図鑑』新垣柴太郎・吉野哲夫著、新星図書出版発行
 『水族館動物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団監修・発行
 『磯の生き物』屋比久壮実著・発行、アクアコーラル企画編集部編集
 『沖縄海中生物図鑑』財団法人海中公園センター監修、新星図書出版発行
 『いちむし』アクアコーラル企画発行


ベニシオマネキ

2011年05月06日 | 動物:魚貝類

 食えないものは捕まえない

 食い物としてのカニは大好きだが、生き物としてのカニには、私はあまり関心が無い。海辺で遊んだり、キャンプしたりしているとカニには幾度も出会うが、それを眺めたり、手に取ったりすることは無い。このHPを始めてから写真を撮るようになっているが、それでもまだ、カニを掴んでみようとは思わない。不用意に掴んで、鉗(ハサミ)に挟まれて痛い思いをするのが嫌だからである。

  もう10年くらい前になるか、本部(沖縄島北部の町)でキャンプをした際、カニ網(カニを捕獲する罠)を持っていき、漁港の近くに仕掛けた。甲の幅12センチほどのガザミが1匹捕れた。それをクーラーボックスに入れ、家に持ち帰り、茹でて食った。その間何度もカニを掴んでいるが、それは別に嫌では無い。食うためなら、鉗(ハサミ)に挟まれて痛い思いをすることがあったとしても構わないのである。

 シオマネキはたいてい群れでいる。捕獲しようと思えば大量に捕れそうである。ではあるが、そうしようとはちっとも思わない。食えないから。

 
 ベニシオマネキ(紅潮招き):海産のカニ
 スナガニ科イワガニ型のカニ 方言名:カタチミガニグヮー(シオマネキの総称)
 シオマネキが広辞苑にあって、潮招き、または望潮と漢字が充てられ「干潮時に大きな鉗を上下に動かすさまが潮を招くように見えるから」と名前の由来もあった。本種はその鉗(ハサミ)が鮮紅色をしているからベニ(紅)と付くものと思われる。
 方言名でカニのことをガニと総称するが、本種はカタチミガニグヮーと特に名がつけられている。片爪カニということ。グヮーは小さいという意味。爪(鉗)が片方しか無いのではなく、一方がとても大きくて、もう一方がほとんど目立たない。広辞苑のシオマネキの項にも、雄の鉗は「左右の一方が大きくて、ほとんど体に匹敵する」とある。
 河口の泥地に穴を掘って生息し、たいてい群れている。甲長11ミリ内外、甲幅18ミリ内外と小さなカニだが、鉗が大きく鮮紅色をしているのでよく目立つ。
 
 後ろ姿

 記:ガジ丸 2009.10.25 →沖縄の動物目次
 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『沖縄釣魚図鑑』新垣柴太郎・吉野哲夫著、新星図書出版発行
 『水族館動物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団監修・発行
 『磯の生き物』屋比久壮実著・発行、アクアコーラル企画編集部編集
 『沖縄海中生物図鑑』財団法人海中公園センター監修、新星図書出版発行
 『いちむし』アクアコーラル企画発行


イラブチャー

2011年05月06日 | 動物:魚貝類

 熱帯魚の青さ

 海岸の岩場の上から海を覗くと、たまに青い魚の陰を見ることができる。50センチほどの大きさがあるので高いところからでも見える。まあ、沖縄の海がきれいであるからということもある。ほぼ透明な海の水は、魚の陰もはっきり映してくれる。
  その良く目立つ青い魚はおそらくイラブチャー。大きい魚だが、岸にも近付く。昔、小浜島で、膝下まで海に浸かって釣をしていたときに、足元をイラブチャーが通り過ぎるのを見ている。私の竿は小さく、針も小物用の針で、餌もサンマを小さく切ったものだったので、イラブチャーの獲物とはならなかったようである。残念であった。

 イラブチャーは、スーパーの鮮魚売り場や居酒屋では刺身でよくお目にかかる。刺身以外の料理で食したことは、私は無い。皮付きの刺身は美味しいものの部類に入る。
 イラブチャーの和名であるブダイは、ブダイ科の魚の数種を総称したものであるが、イラブチャーという名前もまた同じくブダイ科の魚の数種を総称したものであるらしい。その中でもよく目にするものはアオブダイと通称されるナガブダイ。

 
 イラブチャー(オスはオーバチャー)
 和名:ナガブダイ(長武鯛・不鯛) ブダイ科の海産食用魚
 全長60センチ 生息場所サンゴ礁域 食性は造礁サンゴ類、藻類
 名前の由来は方言名も和名も不詳。不鯛は、鯛に似ているけど鯛じゃ無いということかもしれない。ブダイを沖縄読みするとブチャーになりそうだが、タイのことをチャーというのを聞いたことは無い(鯛はマジク)。オーバチャーのオーだけは青ということだと判る。オスは青っぽい色をしているからオーとつく。ただし、メスは赤っぽい色をしているが、イラは赤いという意味では無い。イラーと語尾を伸ばすとスケベという意味になる。スケベな事をされて、顔が赤くなった女の人に喩えたというわけでもあるまい。
 写真のものアオブダイとあるが、オーバチャーのことを言っていると思われる。

 ゲンナーイラブチャー
 和名:ナンヨウブダイ(南洋武鯛・不鯛) ブダイ科の海産食用魚
 全長80センチ 生息場所サンゴ礁域 食性は造礁サンゴ類、藻類
 本種は、オスメスの体色差はあまり無い。成長するとオスは額が隆起する。琉球列島からインド、西太平洋域に分布する。

 記:ガジ丸 2006.9.9 →沖縄の動物目次
 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『沖縄釣魚図鑑』新垣柴太郎・吉野哲夫著、新星図書出版発行
 『水族館動物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団監修・発行
 『磯の生き物』屋比久壮実著・発行、アクアコーラル企画編集部編集