台風に虐められながらも10月30日にニンジン、ホウレンソウの種を播き、理想とする自給自足生活がやっと始まった。畝(1畝約3坪)は今のところ4畝で、11月1日にはタマネギ、ウズラマメも播いた。今週中にはもう2畝耕してジャガイモ、シマラッキョウなども植付ける予定。いずれも当初の予定より一ヶ月余遅れ。台風のせい。
話を進める前に農業用語の解説を少し、広辞苑から。
堆肥(たいひ)
「藁・ごみ・落葉・排泄物などを積み重ね、自然に発酵・腐熟させて作った肥料。」
基肥(もとごえ)元肥とも書く。
「播種・移植など耕作時、またはそれ以前に施す肥料。ねごえ。」
普通、植付のために畑を耕す際は元肥として堆肥を土に混入する。「完熟牛糞堆肥」などが農協やホームセンターに売られていて、私もたいてい「完熟牛糞堆肥」を購入し、これまで宜野湾の畑ではそうしてきた。しかし、今回はそうしなかった。
300坪の畑は「なっぴばる」と名付けている。ウチナーグチで「ないるうっぴどぅないる」の略、「成る分だけ成る=できる分しかできない」という意。私の理想としては300坪に「外から何も持ちこまない」で「成る分」にしたいと思っている。
「外から何も持ちこまない」はちょっと大げさな言い方だが、ここでは言う「何も」の「何」は畑に必要な種と畑に必要とされている肥料の事を指している。
種は、最初は市販のものを購入するが、育った作物が種を着けたらそれを採取し、翌年からはその種を播く。市販の種の多くは採取した種を播いても同じものはできないと聞いているが、それでも沖縄で古くから栽培されている、いわゆる在来種であれば大丈夫であろうと考えている。落花生など豆類は市販のものでも可能だと思う。
堆肥は畑にあるもの(雑草など)を用いて作る予定。できるかどうかはまだ不明。夏に刈ったススキを山積みにして、2週間ほど経ってからそのススキを退けると、土の上に白い菌が生えていた。これは堆肥作りにとって良い菌だと思われる。また、台風で倒れたバナナ数本の幹を1m内外に切り、それを山積みにしておいたところ、二ヶ月余経ってバナナを退けたら、下になっていたバナナはほとんど原形を留めず、黒い土のようになっていた。これはそのまま堆肥として使えるのではないかと思われる。
「外から何も持ちこまない」は「300坪の中で起承転結ができる」ことを目指してのこと。草刈り、畝立て、種播きから始まり、育ち具合に一喜一憂しながら収穫で終わる。そんな野菜物語が300坪の中だけで1編となる。いずれは畑小屋を住まいとし、自らの糞尿を肥料にするシステムを作り、雨水を飲み水にできるシステムも作り、風力と太陽光で電気を賄うつもり。300坪の中だけで1編となる農夫物語となる。
農夫物語の終わり頃、死期の近づいた農夫は朝いつものように起きて、いつものように芋を食い、いつものように茶を飲む。だけど、いつもならその後畑仕事だが、農夫は畑を眺めるだけだ。そうやって数日後、「いよいよだな」と悟った農夫は畑に出て、芋の葉の茂る中で横になる。「世話になったな」と芋に感謝して、目を閉じる。
記:2012.11.9 島乃ガジ丸