「楽」とは何か?と考えてみた。「楽な仕事だ」といった場合の「楽」は体力的にも精神的にも「易しい」という意味で使われることが多い。「楽して生きたい」といった場合の「楽」は「何の苦労も無く」という意味で使われていると思う。
今年7月中旬から始めた300坪の畑なっぴばる、一人手作業でやり続けている。鎌での草刈りや、鍬での土を耕す作業は体力的になかなかハードである。夏の間は特にきつくて、家に帰るとぐったりだった。一人手作業での畑仕事は楽では無い。
「楽したい」と思わぬことも無い。ただ、「楽とは何か?」と考え、働かずとも一杯金があり、毎日たっぷりの自由な時間があり、豪華な家に住み、高級レストランで食事し、海外旅行にも行き放題などが「楽」とすると「それはつまらない」となる。「働かずとも食って行けて、毎日寝そべってテレビを観る」なんてのももちろんつまらない。
播く予定だった種のほとんどを播き終わって、なっぴばるは今、溜池作りと除草作業が主な仕事。手作業による草刈りは便所(和式)座りして行うので腰が痛い、溜池作りも穴掘りは力仕事だし、縁石や敷石設置作業は同じく便所座りなので腰が痛い。
溜池作りも除草作業も肉体的に苦しいので、その作業そのものは「楽か苦」かと言えば「苦」になる。ではあるが、刈り取った後の地面を見ると「おー、きれいになったじゃねーか」と自己満足に浸ることができる。溜池作りも出来上がりつつあるのを見て満足するし、完成した時の達成感を想像すれば大きな楽しみとなっている。
楽しみと言えばもちろん、一番の楽しみは作物の収穫とそれを食べることだが、今育ちつつある作物の成長を見ているのも楽しみだし、畑小屋作りも、台風による試練もあったが、とても楽しかったし、今設計中のトイレ作りもきっと楽しいはず。
「楽しい」とは何か?と考えてみた。「楽しい」の楽と「楽」の楽は同じ字だが、広辞苑を引くと「楽しい」は「満足で愉快な気分である」となっている。一方、「楽」は「心身が安らかでたのしいこと」とあり、その説明文の中にある「たのしい」を言いかえると「心身が安らかで満足で愉快な気分であること」となる。両者ほとんど同じ意味のようだが、「楽しい」には「心身が安らか」という条件はつかないようだ。
そう、ワクワクしたりドキドキしたりするのは「心が安らか」とは言えないが楽しい場合がある。スポーツなどで身体を動かすことは「身体が安らか」とは言えないが、そのスポーツを好きでやっている分にはとても楽しい。
私の一番の楽しみである作物の収穫、病害虫の被害も無く、無事作物が育ってくれることを願っているが、農薬を使わないと決めている以上、それは作物の生きる力に頼る他ない。病害虫の不安は大きい。畑仕事で腰に痛みを感じ、腕にも肘にも膝にも少々の痛みを感じ、この先、一人手作業を続けて行って体力が持つかどうかの不安もある。
それでも全体的に見れば畑仕事は楽しい。楽じゃないけど楽しい。それはたぶん、私に余裕があるからだと思う。畑の芋を掘れば取りあえず食ってはいけるという余裕だ。昔はきっと楽が楽しいことだったに違いない。毎日が厳しい労働で、病気、怪我、飢えなどで死が傍にある。そんな中で得る「楽」は、「楽しみ」に直結したのであろう。
記:2012.12.21 島乃ガジ丸