ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

農夫の信仰

2013年02月08日 | 通信-その他・雑感

 私が借りている300坪の畑なっぴばるの北隣はSさんのウージ(さとうきび)畑で、今(2月)、収穫の最中である。その向かいのSさんNさんが共同でやっている畑は主にジャガイモを作っていて、これも今、収穫の最中である。SさんNさんの隣は87歳の爺様NHさんの畑となっている。主にシークヮサー、バナナなどを生産している。
 過日、その爺様NHさんに会った時、「知り合いの料理人がイーチョーバーを欲しがっているんだけど、探せない」旨のことを話すと、「イーチョーバーなら私の所にいくらでもある。持って行きなさい」と言い、彼の畑に案内してくれた。
 爺様NHさんについては2012年12月14日付けのガジ丸通信『立ち往生を目指して』で一度紹介しているが、その内容に間違いがあった。以下引用。

 爺様は名前をNさんと言い、御歳87とのこと。畑の場所は坂道を上り切った辺りで、なっぴばるから少なくとも徒歩30分はかかる所。自宅はと言うとなっぴばるから東南方向へこれも徒歩30分はかかる所。毎日往復2時間も歩いているようだ。
 87歳のNさん、そのお陰かどうか足腰はしっかりしており、背中も真っ直ぐ。耳も遠くは無いし、言語明瞭。いつもニコニコしていて心も健康そうだ。

 この中で「87歳、足腰はしっかりしており、背中も真っ直ぐ。耳も遠くは無いし、言語明瞭」は確かにその通り。間違いは「畑の場所は坂道を上り切った辺り」、「自宅はと言うとなっぴばるから東南方向へこれも徒歩30分はかかる所」、「毎日往復2時間も歩いている」など。私が人の話をテーゲー(適当)に聞いていることの証拠。
  N爺様の畑が「坂道を上り切った辺り」と覚え違いをしていた私は、「私の畑まで案内するよ」と爺様が言った時、「車で行きましょうか?」と提案した。
 「何言っている、畑はすぐそこだよ」と言われ、間違いに気付いた。
 「坂道を上り切った辺り」にあるのは爺様の家、そこから30分程歩いて畑。東南方向へ行くのは目的も方向も徒歩時間も間違いで、南へ1時間余歩いた場所にある教会へ通っているとのこと。爺様はある宗教団体の熱心な信者であった。
 朝と午後の2回、教会まで歩いて行き、お祈りをするのだそうだ。つまり、N爺様はほぼ毎日家から畑、畑から教会、教会から畑を午前中に、そして午後には畑から教会、教会から畑、畑から家の、合計5時間余歩いているわけである。
          

  爺様の「いつもニコニコしていて心も健康そう」はその信仰からきているのかもしれない。じつは、爺様の畑に案内されている数十分の間に息子に対する愚痴を聞かされた。いろいろ悩み事もあるようであった。そんな悩み事から表面上でも離れるために祈りが必要なのかもしれない。悩みから離れて「いつもニコニコ」しているわけだ。
 私には日常、思い悩むことが無い。信心深かった母親に似ず、元々不信心者の罰当り者なのだが、私は何かに何かを祈ることもあまり無い。たぶん、女房子供という家族がいないということが悩みの無いことの大きな要因となっているのであろう。一人であれば人生何とかなるのである。淡々と畑仕事をやっていき、もしも、にっちもさっちも行かなくなったら死ねばいいだけのことだ。これが新米農夫、私の信仰と言えるかもしれない。
          

 記:2013.2.8 島乃ガジ丸


ウイキョウ

2013年02月08日 | 飲食:食べ物(材料)

 憂い今日

 友人の元美人妻Iさん、「元」は「美人」だけでなく「妻」にもかかっているが、彼女は今独りでは無い、パートナー(と彼女が呼ぶ男性)がいて、彼と共同で飲食店を経営している。その飲食店は、昼間は主に和食で彼女が料理し、夜は飲み屋になってパートナーのTさんが主に料理する。彼は洋食のコックなので肴は主に洋食となる。
 そのTさんから「ウイキョウが欲しいんだけど、作れる?」と頼まれた。ウイキョウは英語名をフェンネル(fennel)と言い、洋食ではよく用いられるとのこと。
 頼まれたのはもう三ヶ月も前の事だが、農協にもホームセンターにも置いてなくて、家庭菜園をやっている親戚や知人にも持っている人はいなかった。それが先日やっと、近所のハルサー(農夫)大先輩、87歳の爺様Nさんから頂くことができた。Nさんの畑からウイキョウの苗を6株ほど頂き、私の畑なっぴばるの一角に植えた。

  フェンネルもウイキョウもその名は聞いたことあるが、ピンとこない。沖縄名をイーチョーバーといい、フェンネル=ウイキョウ=イーチョーバーとくれば、その姿がピンとくる。沖縄では有名な薬草の一つ。雑炊の具や天ぷらにして食すことも知っている。
 ただ、食し方は知っているが、私はかつてそれと知ってイーチョーバーを食った記憶は無い。母の作った料理の中にあり、知らずに食べたことはあるかもしれない。

 Nさんからウイキョウの苗を頂いた日、Nさんからはまた、袋一杯のウイキョウの葉も貰った。それを車の後部座席に置く。車の中は良い匂いがした。芳香剤など使わない私の車がデートにも使える車となった。翌日その葉を料理人のTさんへ届ける。
 「ありがとう。でも、欲しいのはウイキョウの根の方なんだ」とのことであった。
  Tさんからは他に、ビート、バジルも作って欲しいと要望がある。平和運動家の婆様Zさんからは薬草いろいろ、ハンダマ、ウンチェー、クミスクチンなどの注文がある。これらの内、バジルを先日やっと植えたばかり、他はまだ何の準備もできていない。
 Nさんから貰ったウイキョウの根が食用になるほど育つには、1年はかかるであろう。せっかく買う人がいるのに私に売るものが無い。300坪の畑なっぴばる、安定した収入(小遣い程度でも)を得るにはまだまだ時間がかかりそうだ。

 昨日は未明の雨で、土が濡れていて畑仕事は難渋した。予定の半分もできなかった。枝豆の種播きがもう一週間遅れている。今日も昨日と同じく未明に雨が降り、畑に入れそうもない。空を見上げると曇り空、憂い今日となっている。
 
 
 ウイキョウ(茴香):葉菜・薬用
 セリ科の多年草 地中海沿岸の原産 方言名:イーチョーバー
 ウイキョウは広辞苑に茴香と漢字があった。生薬として古くから利用されていたらしいので、ヨーロッパから中国へ伝わり、中国で茴香と名があてられ、日本へ伝わった際に、その漢語がそのまま和語になったものだと思われる。
 英語名はfennelという。フェンネル、ヨーロッパでは古くから利用されている薬用・香辛料、果実から採れる精油は石鹸香料などにも使われるとのこと。
 高さは1~2メートル。葉は糸状に裂ける。枝先に長い花序を出し、淡い黄色の花を多くつける。開花期は夏。全体に芳香があるが果実は特に強い。秋に熟す。
 生薬として香味料や薬用に用いられる他、茎葉は野菜としてサラダ、雑炊、魚汁、天ぷらの具などに使われる。果実や精油は健胃、去痰に効くとのこと。

 記:2012.2.6 ガジ丸 →沖縄の飲食目次