父が死んだ後の処理において、保険関係の書類、固定資産関係の書類がどこにあるか分からず(結局不明なままのものもいくつかある)、大いに難儀した。家の財産や各自の保険関係についは全て母が管理していたようで、その母が父より先に死んだものだから管理者不在となってしまったのだ。その経験から、私は私の身辺整理をちゃんとやっておこうと決めた。決めたけど、あと10年位は生きるだろうと思い、まだやっていない。
ただし、財産(たいして無いけど)処分で後の人(弟とか甥とか従姉妹たちとか友人たちとか)が難儀しないためというのとは別の目的で、身辺整理はもう10年以上も前からやっている。たいして無い財産の整理ではなく、持ち物の整理。
ワンボックスカーに載るだけの持ち物で生活したいと願っている。ワンボックスカーの屋根にソーラーパネルを取付け、車内部のとは別のバッテリーを備え、小さな冷蔵庫とラジオくらいは使用可能な電力を得、車の中に布団を敷き寝られるようにする。いつでもどこにでも行ける状態にする。住所不定無職の男になるわけだが、カッコ良く言えば、住所は地球上であり、職業はさすらいの農夫だ。行った先々で農地を借り耕す。
先日、9月10日の昼前、帰宅する大先輩農夫N爺様に声をかけられた。畑の草取りをしていた私は、手を止めて爺様のいる道端まで行った。「何している?」、「今は草刈です」と少しユンタク(おしゃべり)していたら、ふと、センダングサの花が咲いているのに気付いた。繁殖力が強いので種ができると厄介な草、で、草に近付き、抜いた。
1本目の茎を抜いた時、右手首にチクっとした痛みを感じた。「棘のある草でもあったか?」と思ったが、気にせず2本目を抜いたら、またも同じ個所にチクッ、そのすぐ後に鼻の穴の中に何かが入る気配を感じたかと思ったら、またもチクッ。で、思い出した。その近くにガヤバジ(チビアシナガバチ)の巣があったことを。
ブログ『キアシナガバチ』の頁は、その副題を『ハチの経験はイチ』としているが、そこに書いてある通り、私は、ハチに刺された経験は過去に1回だけだった。その記事は2005年8月付けで、その中に「20年ほど前」とハチに刺された時期を書いてある。よって、私がハチに刺されたのは今からだと30年ほど前となる。
30年も経って「ハチの経験、ニ、サン、シ」がほんの数秒の間に加わった。刺された痛みはたいしたことない。鼻の穴の中の違和感は長く続いたが、手首の腫れも10分後には引いた。痛みよりは、うっかりハチに刺されたことが問題だと私は思った。
「うっかり」が問題なのだ。刺したハチがたまたま小さなガヤバジだったから良かったものの、これがスズメバチ類のような強力な毒バチだったならどうなっていたか?あるいは、藪の中に入って、「うっかり」ハブを踏みつけて、怒ったハブに噛まれたらどうするんだ?「うっかり」ハンドルを切り損ねて対向車と正面衝突したら・・・。
じつは、運転中にヒヤっとすることがたまにある。雨の坂道でスリップしたこと、子供が急に飛び出して間一髪だったことなど。「うっかり」は年齢と共に増えていくはず。そうなのだ、私は明日の命も不確定なのだ。身辺整理の時期は今なのだと悟った。
もう一つじつは、ハチに刺される前日、楽しい夢ばかり見る楽天家の私が、その日は何と、脳梗塞で倒れる夢を見た。正夢にならないとも限らない。時期は今なのだ。
記:2014.9.12 島乃ガジ丸