ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

フーチバージューシー

2018年07月12日 | 飲食:食べ物(料理)

 ママさんの味

 フーチバージューシー、和語にするとヨモギ(蓬)ゾウスイ(雑炊)となるが、雑炊といっても、沖縄の雑炊には2種類ある。その前に雑炊とは、「大根・ねぎなどの具を刻みこみ、味付けをして炊いた粥。おじや」(広辞苑)のこと。その意でいう沖縄の雑炊はヤファラジューシーと言う。ヤファラは「軟らかい」という意。俗語だと思うが、ボロボロジューシーとも言う。ボロボロは和語で言うと「とろとろ」のことだと思う。
 ボロボロ(とろとろ)していないジューシーもあって、それはクファジューシーと呼んでいる。クファは「硬い」という意。ヤファラジューシーは雑炊だが、クファジューシーは炊込み御飯のイメージ。私は釜飯(若い頃釜飯屋でバイトしていた)を連想する。トゥンジー(冬至)ジューシーは概ねクファジューシーである。

 フーチバージューシーのクファジューシもあるかもしれないが、私は見たこと無い。子供の頃から食べていた、つまり、祖母や母が作っていたフーチバージューシーはヤファラジューシーであった。ヤファラジューシーであったのは覚えているが、その味までは記憶していない。私がよく覚えているフーチバージューシーはママさんのジューシー。
 ママさんとは、ある飲み屋のママさん。浪人生の頃、私は実家に住んでいたが、実家から徒歩10分ほどの場所にその店はあった。その店は高校の同級生たちの集まり場所であった。私はその店で沖縄の高級珍味である豆腐餻の美味さを知り、ウミガメやサメの肉を食い、そして、飲んだ後の締めにはたいていフーチバージューシーを食べた。
 ママさんの作るフーチバージューシーは美味かった。祖母や母の味は覚えていないが、ママさんのは覚えている。中味(豚の臓物)の入った味噌味のジューシー、生玉子が1個落されていて、それを掻き混ぜながらスプーンで食べた。
 店は既に30年ほど前に無くなり、ママさんも既に亡くなって、そのフーチバージューシーを食することはできなくなった。自分で作ってみてもその味は出せない。

 フーチバー(ヨモギ)は高血圧に効くことで知られ、干した葉を煎じて服用するか、生の葉を青汁にして飲む。肩凝り頭痛にも効くとのこと。
     

 ヨモギ(蓬):野菜、薬草
 キク科の多年生草本。国内では本州以南~南西諸島まで分布。方言名:フーチバー
 フーチバーはジューシー(雑炊)以外に、味噌汁の具としても使う。臭みのある魚汁、牛汁などにはよく用いられる。山羊汁には欠かせない。本土で餅などに使われるのは、いわゆるヨモギ、学名はArtemisia princes Pamp.で、沖縄で料理に使われるのはニシヨモギと云い、学名はArtemisia indica Willd.とのこと。ニシヨモギはアクも苦味もヨモギより少ないので、料理に使えるらしい。
 ヨモギは、生の葉が皮膚病や傷の止血、乾燥葉を煎じて飲むと神経痛、リューマチの薬になる。沖縄ではもっとも親しまれている薬草となっている。
 方言名のフーチは艾(モグサ)のこと。フーチバーはモグサの葉という意味になる。名の通り、モグサはヨモギから作られる。中国ではヨモギのことを艾と書く。

 記:2018.7.11 ガジ丸 →沖縄の飲食目次