新居が決まらない内からシロアリアパートの退去は8月31日と決まっていたので、荷物の多くを実家へ運んでいた。新居の正式契約は9月1日で、その日から実家に置いてあった荷物を少しずつ、軽乗用車に積める分ずつを新アパートへ運んでいる。
荷物を運び入れる前に、当然のことながら新居の掃除をした。「前の人が退去した後、掃除は済ませてあります」と不動産屋の可愛い人妻が仰っていた通り、最初に見た時はまあまあきれいだな、と思ったのだが、よーく見るとさほどきれいでは無かった。
新アパートは入居者が退去すると業者に頼んで部屋を掃除するらしい。私も退去時の掃除代として1万5千円払った。しかし、改めて良く見ると、部屋は「業者に頼んだ掃除がこの程度かよ!」と思うほどの状態だった。ベランダにもゴミが多く溜まっていた。「いったい、いつ掃除したって言うんだよ!」と愚痴も出る。で、ふと「いったいいつからこの部屋は空いているのだろう」と気になった。敷金礼金無し、仲介手数料無し、最初の一ヶ月間家賃サービスなんていう物件だ、何か「訳有り」かもと気になったのだ。
で、調べると、2月上旬からこの部屋は空いている。その頃に掃除して以来ってことだから、半年以上掃除していないことになる。なるほど、ならばさほどきれいではないことが納得できる。半年程度なら「訳」も特になかろうと安心する。
「きれいではない」と私が感じた最大の原因はフローリングにあった。ちょっと見はきれいであるが、よく見ると汚いのだ。不動産屋さんに案内された時は「ちょっと見」しただけで「きれいじゃないか」と満足してしまったのだ。男の眼は細かいところに気付かないと言われているが、私の眼はまさにそれ。節穴の眼であった。
フローリングの板と板がピッタシ合わさっていなくて、1~2ミリほどの溝ができている。その溝に細かな埃が溜まっている。よーく見るとその埃に気付く。なので、汚いと感じる。「床板を貼ったのは素人だな、俺でももっと上手くできるぜ」と思う。板と板の合わせ目が100あるとしたら、その70くらいには溝が走っている。
薄い金属板で溝のゴミを掻き出し、さらに、デッキブラシでゴシゴシして細かな埃も掻き出し、掃除機で吸い取り、その後、洗剤で拭き掃除をする。溜まった埃に付着していたバイ菌もあろうと、さらに、アルコール除菌剤を撒き、拭き掃除をする。押し入れや棚、靴箱、トイレ風呂場などもアルコール除菌する。長い時間を費やした。
掃除は新居だけでは無い。お別れする旧居の掃除もした。シロアリの巣がある台所の戸棚を除いて、一応きれいにして大家にお返しした。さらに、実家の掃除もした。仮置きしていた荷物を運び出しながらのついでの掃除。さらについでの布団干し、洗濯。
そんなこんなで忙しい中、温かいシャワーを浴びて体を休めたいと思っている中、5日から7日の3日間、私は冷たいシャワーに甘んじた。ガスが来ていないのであった。不動産屋に電話すると、「ガス会社に電話して契約しないといけませんと、お渡ししたプリントに書いてありましたが」と言う。そういえばそんなこと言っていたなぁとそのプリントを確認すると、確かにそう書いてあった。私の眼はやはり節穴であるようだ。
記:2011.9.9 島乃ガジ丸