玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

車庫のツバメ

2014年07月28日 | 日記
 車庫にツバメが巣をつくって抱卵を始めて十日ほど経つ。十年前から初夏の訪れとともにツバメがやって来て、いつも同じ車庫の、同じ蛍光灯の傘の上に巣をつくる。ただし抱卵に至るのは初めてである。
 巣の残骸や糞が車の上に落ちてくるので、雨傘を逆さに吊して対策を講じたのは十年前だった。ただし、車庫であるため、夕方にはシャッターを閉めるから、最後まで営巣を続けることができないせいか、毎年やってくるツバメは途中で巣を放棄していつの間にかいなくなっていた。
 ところが、毎朝のようにツバメが車庫の周辺を飛び交って、シャッターが開くのを待っているのを目撃してしまった。そのうちにメスのツバメが巣に居座って、抱卵を始めたことに気付き、とうとうシャッターを開けっ放しにすることにした。
 毎朝オスのツバメが向かいの電線に止まって、車庫の中の様子を窺っているのを目にするし、時には活発に飛び回って巣に直行し、メスに餌を与えているらしいのが分かる。ツバメのオスは、なかなかに家庭的なのである。
 しかも、車庫の中に私がいる時にはオスは絶対に入ってこない。入ってこようとして、私の姿を発見して、あわてて飛び去っていくこともしばしばで、卵を無事に孵すためには、車庫に立ち入るのも遠慮しなければならないようだ。
 メスの方は人の気配があっても、車のドアをバタンと締めても、微動だにせず、ひたすら抱卵を続けている。種の保存の本能は偉大だ。
 卵が孵化したら、もっとたくさんの餌が必要になるから、ツバメの出入りはさらに頻繁になるだろう。無事に卵が孵り、雛が巣立ってくれることを願っている。それまで車庫のシャッターは開放しておこう。

越後タイムス7月25日号「週末点描」より)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿