北海道蘭越町の試掘坑から有毒の蒸気が噴出した。
試掘は、地熱発電の調査工事として行われているもので、噴出した蒸気は飲料水基準濃度の2,100倍のヒ素などを含んでいるとされている。
住民の健康被害を防ぐとともに農産物の汚染が局限されるよう望むところであるが、以後の教訓とすべき多くを示しているように思える。
阿蘇山麓の草千里には、約119ヘクタール(福岡ドーム17個分)に約20万枚のソーラ発電パネルが設置され、九州電力川内原発1基分の1割に当たる約8万kwを発電しているが、西日本新聞の航空写真で見ると発電施設は、バブル華やかな頃の富士山裾野のゴルフ場の有様に似て大いに景観を損なっているように感じるし、阿蘇の降灰や中国渡来の黄砂を考えれば発電素子の寿命には限りがあるように思える。
化学的な根拠があるのか不明であるが、大規模ソーラー発電施設の周辺は、気温が2・3度上昇し生態系にも影響を与えると聞いているので、景観保護・生態系維持の両面から、地元住民には有難くない存在と化しているように思える。
脱炭素・脱原発を叫ぶ人は、太陽光・地熱・風力を「自然から無償・無限に与えられるエネルギー」の前提で論じるが、北海道と阿蘇(熊本)の例を見ると、完全には無償とは言えないように思える。
日本の自然エネルギーの環境は、地熱を除いて不安定であるとは指摘されてきたが、その地熱にしても地震等の地殻変動で温泉が涸れたりする事例や今回の有毒蒸気噴出を聴くと、些かの不安要素があるように思える。
おりしも福岡・佐賀・熊本・大分は、発達した線状降水帯で大きな被害を受けた。地上の「目に見える気象」は予察することが可能で精度も高くなってきたが、地中の構造や地殻の動きに付いては全くの神頼みではないだろうか。また、これらの自然現象が制御不能であることを考えれば、文明社会に不可欠の「電力の安定供給」のために不安定な前提条件を以てするのは如何なものであろうか。