頓挫しているリニア中央新幹線建設計画が、漸くに前進の気配を見せ始めた。
リニア中央新幹線については「東海地震における東海道新幹線の代替路線」や「東海道新幹線自体の老朽化による長期運休補完」等の理由から、2011年5月に整備計画が決定され、2027年には東京~名古屋間で先行開業(最速で40分)、東京都 ~大阪間の全線開業は2037年を目指し、その場合は東京~大阪間は最速67分で結ぶとされていた。
ルートや途中駅の選定時から通過する各県での思惑が入り乱れて前途多難の様相を見せていたが、何とか合意できたものの着工できずに当初計画であった先行開業は大幅に遅れることとなった。最大の原因は、途中停車駅が得られなかった静岡県(川勝知事)がへそを曲げて「トンネル掘削によって大井川の水量が大幅に減少する」と難癖をつけたものと思っている。
以後、水利権を持つ大井川流域自治体や東電を巻き込んで侃々諤々の状態であったが、トンネルの湧水全量を大井川に放流するよう計画が変更されることで水量や水利権の調整も進んだために静岡県も矛を収める気配を見せ始めたと報じられている。
昭和30年代、東海道メガロポリス云う言葉がもてはやされ、東京~大阪間の物流が日本を支えているとされてきた。そのために東海道新幹線と・東名高速道路が優先的に整備されてきたが、この物流網には致命的な弱点を抱えている。風光明媚なハイキングコースで有名な静岡市の薩埵峠から見下ろすと、国道1号(東海道)・東海道線・東名高速・東海道新幹線が全て富士川河口付近の1㎞内を通っていることが一望できる。もし、この付近が被災すれば東海道メガロポリスの地上物流網は機能不全に陥ってしまうことは明らかである。
この事態を防ぐためにもリニア中央新幹整備の意義は大きいと思われるが、停車駅を持たない静岡県にあって難癖の一つも付けたい気持ちであろうし、東海道新幹線の「ひかり」や「のぞみ」の一部列車の静岡駅停車を実現させるために相当の時間と陳情が必要であった苦い経験もあるように思っている。
川勝知事にあっては、度重なる舌禍による市町村長の離反によって、今や四面楚歌に等しい「死に体」であるとも報じられている。
川勝知事のリニヤ中央新幹線に対する横槍も、静岡県の利益を守るための当然の要求・戦術であったであろうが、大井川水量の確保の目途が立ち、流域自治体も計画推進に同意している現状では、高所的見地から矛を収めて頂きたいものである。
とは言え、恒常的な赤字補填を必要とする富士山静岡空港がリニア中央新幹線の開業によって更なる悪影響を被るという懸念には心から同情するところである。
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