もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

2党1会派の改憲意欲に思う

2023年08月20日 | 憲法

 維新・国民両党と衆院会派「有志の会」が改憲に向けて協調すると報じられた。

 衆院会派である「有志の会」は総勢5名の小会派であるが、先の総選挙後の2021年11月に結成され、5人ともにかつて民主党・民進党・希望の党に所属した経験があるとされている。
 メンバー(敬称略)は、吉良州司(代表、大分1区)、北神圭朗(京都4区)、緒方林太郎(福岡9区)、福島伸享(茨城1区)、仁木博文(徳島1区)で、当選回数も6~2回と既に中堅議員と呼ばれる諸氏である。
 また、彼等の選挙区を眺めると、保守有利とされるのは徳島選挙区くらいで、民主党の系譜に連なる政党に属した方が当選する確率は高いように思えるが、立憲民主党などに加わらないのは、所謂「旧民主党の鵺政策と何でも反対への愛想づかし」によるものであろうか。
 歳時記的な内閣不信任案には反対するなど、小なりと雖も独自の路線を五分の魂で貫いている姿勢は、政治家のあるべき姿を示しているように思える。
 今回の2党1会派による改憲協調行動は、現憲法が時代の趨勢から取り残されている現状を理解した政治家であれば当然すぎる選択であるように思う。
 護憲主張者の多くは「改憲=9条改正」と短絡的に捉えているが、人権や教育などを眺めても1世紀近く前の条文が古色蒼然として時代にそぐわないものであるのは一目瞭然である。同性婚を認めよと主張するならば、「性」にまつわる憲法条文を改正すれば解決でき、大学無料化を目指すには「義務教育以外の国家関与否定」条項を廃止すれば良い。

 しかしながら、最も解り難いのは9条であるのは間違いない。9条は「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と高らかに謳って、現行の「一定のルール下での戦争・武力行使を認めた国際法や国際慣例」とは決別するという、全く新しい概念で書かれている。そこには「侵略戦争」を否定するが「自衛戦争」は容認するという概念が入り込むことは不可能で、「例え武力侵攻を受けても戦争・武力行使をしない」と宣言しているのである。
 自衛隊を保有するに際して、政府は「自衛の戦争は国際法が認めている」という苦肉の解釈をしたが、戦争に関する国際法と国際慣例を否定しながら、自らが否定した国際法に準拠するという論は成り立たない。
 護憲を主張する社民党は「9条堅持、自衛隊違憲」と憲法の趣旨に忠実であるので当然の帰結として「自衛のための戦争も否定」であり、論としては成立する。
 同じく護憲を主張する立憲民主党は「9条は堅持するが自衛隊は合憲で専守防衛の範囲での戦争容認」を現実的選択と糊塗しているのは論として破綻しているのみならず、この行為は「現実の前には憲法の理想と条文を無視する」ことを公然とするに他ならない。野党第1党として政権与党を監視すると胸を張りながら、憲法無視に関しては政権与党と「同じ穴の狢」に堕しているのではないだろうか。


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