国交省が対Ο株水際対策として日本人の帰国者に対しても航空便の予約を停止したことに対して、日本国民の帰国を禁止することは違法であることから官邸が撤回を命じる等、連携不足に起因する混乱が見られた。
そのために、今後は関係省庁の幹部でつくるタスク・フォースで事前に情報を共有して対応に万全を期す方針とされたので、民間におけるタスク・フォースの姿を考えてみた。
タスク・フォースは1943(昭和18)年、アメリカ軍が日本反攻作戦として日本占領の島嶼を順次奪回する「飛び石作戦」を立案したが、それまでの常務編成単位の運用では円滑に機能しないこと、混成の共同部隊では指揮が煩雑であることから、上陸占領作戦に効果的で指揮が一元化できる部隊が必要となって誕生したものとされているが、既に日本海軍では戦時に常務編成の艦艇を抽出して連合艦隊を編成する体制を採っており、これはタスク・フォースの先鞭・元祖と呼べるのではと思っている。
似たような考えでプロジェクト・チームが有るが、プロジェクトチームは多くの場合、計画や情報の集約・分析のためのチームで、実行は常務編成に移譲されることが多いと思う。尾身茂氏が率いる政府の新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員会がその好例で、委員会が持つ権限は政府への提言・答申に限られており、外部組織を動かすことは出来ない。
一方、タスク・フォースは計画よりも実行のための組織であり、そこには当然ながら委任された権限内で外部組織をも指揮・強制できる権能を与えられると観なければならない。
さらに重要なことは、軍事組織におけるタスク・フォースの統制が「ネゲーション(否認)・コントロール」で行われることである。ネゲーション・コントロールの特色は、タスク・フォース指揮官が隷下に示す意志・命令を同時に監督する上級指揮官に写し送付し、上級指揮官の否認が無ければそのまま実行されることである。通常の意思決定手順では、下級指揮官の意志は具申の形で上級指揮官の裁可をを仰ぎ、裁可された場合に改めて麾下に対する命令として発せられることになるが、ネゲーション・コントロールはタスク・フォースの性格上意思決定の時間を短縮する必要から生まれたものである。また、タスク・フォース指揮官の暴走を防ぐために、チェック機能として識見を備えた監督者が不可欠ともされている。
以上のことを踏まえて、今回取り沙汰されているタスク・フォースなる物を考えると、指揮官は誰になるのだろうか。タスク・フォースが省庁の調整機関ではなく実行機関で、コントロールできるのは総理大臣だけであることを考えるならば、すぐさまには思いつかない。タスク・フォース的性格であった河野太郎ワクチンプロジェクト長の再登場となるのだろうかとも思うが、大向こうを意識して奇を衒うことを優先する判断力は適任とは思えない。
また、タスク・フォースには、今回のように動きかけた施策が総理によって否認される可能性を持つことを国民は共有しなければならない。軍事知識が共有されていない日本で、安易にタスク・フォースの思想が受け入れられるとも思えないが、太平の目を覚ます機会になればとも思う。
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