4月に障害者差別解消法が施行され、兵庫県内では初の国政選挙となる参院選を控え、神戸市が仮設スロープ設置による投票所の段差解消や、記載台への滑り止めシート導入に取り組み始めた。同法は障害者の特性に応じた「合理的配慮」の提供を行政に義務付けている。これまでも点字投票や代理投票などが行われてきたが、各自治体は障害者がより投票しやすい環境づくりを模索する。
同法は、障害者や介助者から配慮を求められた際、過重な負担とならない範囲で行政や企業に対応を促す。行政機関が提供する合理的配慮の例として、駐車スペースを施設近くにする▽段差がある場合に仮設スロープで補助する-ことなどが挙げられている。
神戸市は、職員が市内の投票所355カ所を訪れ、段差の有無やスロープを取り付けられるかどうかなどを調べた。必要な箇所に対応していく方針。
また、投票所の記載台はアルミ製で投票用紙が滑りやすいため、滑り止めシート100枚を導入。試験的に全26カ所の期日前投票所に置き、投票用紙の下に敷くことで、手の不自由な人が記入しやすくなるようにしたいという。同市選挙管理委員会は「来年の兵庫県知事選や市長選での本格導入も検討したい」と話す。
県内の他の自治体も、きめ細かい配慮ができるよう準備を急ぐ。明石市は投票事務に携わる職員らに同法への理解を深めるよう促し、西宮市は視覚障害者の投票に必要な点字器の使い方を再確認する。
障害者の自立支援などに取り組むNPO法人ウィズアス(神戸市長田区)の鞍本長利代表理事(65)は「自治体によって合理的配慮の内容に差が出ないようにし、どの投票所でも障害者が1票を投じやすい環境を整えてほしい」と訴える。
手が不自由な人のために導入された投票用紙の滑り止めシート
2016/6/17 神戸新聞NEXT