ゴエモンのつぶやき

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知的障害者の個室施錠 最長20年 鳥取の県立施設

2016年06月18日 03時50分13秒 | 障害者の自立

 鳥取県は15日、鳥取市鹿野町の障害者支援施設「県立鹿野かちみ園」で、知的障害のある40~60代の女性入所者3人が入所時から3~20年間にわたり、個室にいる間は扉に鍵を掛けられ、外に出られないようにされていたと発表した。同園は指定管理者の県厚生事業団が運営。県は鳥取市と共同で立ち入り調査し、虐待と判断した。

 県障がい福祉課によると、3人のうち60代女性は他の入所者の個室に入って掲示物を留めるためのマグネットなど小物類を食べてしまう癖があるといい、施錠期間は約20年。他の2人は40代で、暴力を加えたり受けたりするとして、それぞれ約7年と約3年にわたり施錠されていたという。

 食事や訓練作業などで支援員とともに個室の外にいる時間はあり、鍵を掛けられていた時間は最近で1日6時間半~14時間だった。いずれも家族の同意は得ていたという。5月10日、仕事で同園に出入りする人から県に「虐待ではないか」と通報があり、発覚した。

 国の基準では、障害者の身体拘束をするのは他に手段がない「緊急やむを得ない場合」で、一時的でなければならないという。小林真司・障がい福祉課長は「職員に虐待という認識がなかった」とする一方、「小物類を食べてしまうなど問題があるなら分析し、必要な支援をしなければならないが、それをせず、漫然と施錠を続けていた」としている。

 県と市が調査に入った5月19日以降、同園は施錠をとりやめ、日中は少なくとも職員2人が見守るようにしているという。

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生活保護の障害者、月9万5000円支給でも困窮する理由

2016年06月18日 03時36分36秒 | 障害者の自立

2016年5月末、社保審・生活保護基準部会が再開された。厚労省はまもなく、生活保護法を再度改正するための委員会も設置する予定のようだ。本人にとっての「生活保護での暮らし」とは、障害基礎年金・障害者加算のある障害者にとって、どのようなものだろうか?

生活保護の障害者を苦しめる 年金の「まとめ支給」

 千葉県の県営住宅に住む馬場寿一さん(54歳)は、県営住宅で生活保護を利用して単身生活している精神障害者だ。かつては両親と2歳下の弟との4人暮らしだったが、聴覚障害者であった父親が病死し、ついで一家の生活を肉体労働で支えていた弟が難病に罹患した。弟の発病による失職以後、一家は生活保護を生計の糧とすることになった。肢体不自由の母親と馬場さんの2人は障害基礎年金の支給対象となっているが、2人分の年金では、医療費を含めて一家3人の生活を成り立たせることは不可能だった。

 母親はその後、加齢に伴い、階段のある県営住宅で生活することが困難になったため、施設に入所した。数年後、母親は施設から戻る見込みがなくなり、2014年に世帯分離されることになった。数ヵ月後の2015年1月、弟は病気が進行して他界。馬場さんにとっては、世帯に入ってくる生活保護費が、3人世帯分→3人世帯分(1人は施設入所)→2人世帯分→1人世帯分 と減少し、したがって家計のやりくりが困難になることを意味した。弟を失った後の馬場さんの経済面での苦難は、本連載第36回で紹介したとおりだ。

 その馬場さんに、その後の様子を聞かせていただいた。今、一番困っていることは?

 「収入の、月ごとの『ガタガタ』です」

 馬場さんの生活の糧は、100%が生活保護というわけではない。前述のとおり、精神障害により、障害基礎年金を受給している。2級の馬場さんの場合、年金は偶数月の15日に2ヵ月分がまとめて支給され、金額は約13万円だ。

 「このガタガタが、とても響くんです。なんとかしたいです」(馬場さん)

 児童扶養手当で問題となっている「まとめ支給」の問題だ。「まとめ支給」が深刻な貧困を引き起こしやすいことは、本連載第35回でも紹介した。物心ついて以後、生活歴のすべてが貧困と障害者差別の中にあった馬場さんも、同様に「まとめ支給」に苦しんでいる。

入ると同時に支払いに消える 2ヵ月おきの障害年金

 馬場さんの「ガタガタ」の詳細は、どのようなものだろうか?

 「生活保護費は、基本的に、年金の少ない部分を補っているわけなんですが、それが奇数月に来るんです」(馬場さん)

 このことは、生活保護制度の「補足性の原理」による。就労収入にせよ年金収入にせよ、生活保護は収入の不足分を補って「健康で文化的な最低限度の生活」ができるようにすることが趣旨である。障害基礎年金が受給できるのなら、障害基礎年金と生活保護基準との差額が、生活保護制度で補われる。

 「6月は、月はじめに3万円の保護費を受け取りました。15日に13万円、年金が振り込まれます。でも、7月は月はじめに3万円が振り込まれるだけなんです」(馬場さん)

 合計すれば、年金が月あたり6万5000円、保護費が月あたり3万円。月あたり9万5000円だ。単身健常者の生活保護世帯より多いのは、障害者加算があるからだ。しかも馬場さんの場合は、住居費は県営住宅で家賃は代理納付となっている。医療費・社会保険料の負担もない。「なぜ、これで暮らしていけないのか?」という疑問が持たれるところだろう。

 「でも、年金が13万円入ったら、『支払い』に消えてしまうんです。残ったお金で、次の年金支給月までの生活をやっていくことになるんです」(馬場さん)

 馬場さんの生活保護以外の収入は、障害基礎年金だけ。私から見れば、障害者の中では「やりやすい」方だ。身体障害で、自治体の障害者福祉手当の対象となる場合、1ヵ月あたり1万7000円の手当が3ヵ月おきの「まとめ支給」となり、障害年金による収入の「ガタガタ」と重なり、家計管理が極めて困難になる。この手当は、精神障害では、精神障害者保健福祉手帳の1級だけが対象になる。精神障害1級ならば、成年後見など、本人が管理できないことを想定した制度が利用できることが多い。成年後見の是非はともかく、馬場さんは自分で家計を管理する必要がある。

 馬場さんの困難な事情を、もう少し細かく教えていただこう。

なぜ「1ヵ月分」を残せないのか 2ヵ月おきに繰り返す悪循環

 偶数月の15日には、2ヵ月分の障害基礎年金が入る。「これを半月分だけ手元に残し、半月分は別口座に貯蓄して、簡単に使えないようにすれば良いのでは?」と誰もが思うだろう。

 「でも、必要なものは買わなくてはいけないし、欲しいものも買ってしまいます。どうしても『1ヵ月分は残しておく』ができないんです」(馬場さん)

 本当にそうだろうか? 年金が支給される月に、ふだんの2倍の量の食事を摂ったり、一日3回入浴したりするということはないだろう。着る服の枚数も、洗濯の回数も、増えるわけではないだろう。

 「でも、年金が入るまで、切り詰めて切り詰めて、我慢しているんです。『1ヵ月分残しておけば?』というアドバイスは、そのあたりの人間的な感情を見てくれていないと思います。それに、『支払い』で消えてしまう分が多いんです」(馬場さん)

 馬場さんが「支払い」というのは、水道光熱費や携帯電話の使用料だ。奇数月に滞納した分を、偶数月に一気に払ってしまうことになる。この年金支給月の消費パターンの内容は、会社員が半年ぶりに後払いの給料であるボーナスを手にして、家計の赤字補填に、少しは貯蓄に、ついでに欲しかったパソコンや家電機器に、海外旅行も……という場面と非常に似ている。違うのは、収入の総量と消費金額の慎ましさだ。

 馬場さんは一時期、通信機器の分割支払いと使用料に、1ヵ月あたり2万円以上を支払っていた。2015年1月に弟さんを亡くした後、「長期的には損になる」と理解しつつも、解約手数料を支払って解約。月々の支払料金を減らすことは成功した。それでも、多くの人々から才能を認められている表現活動に必須のツールとして、スマホ1個だけは手元に残した。そのスマホの機器料金の分割支払も終了し、現在、通信費は「1ヵ月あたり1万円以下」ということだ。出来る工夫は既にしているのである。

 ちなみに私は、馬場さんに格安SIMをお勧めしてみたが、「今、そこまで考えられない」ということだ。あまりにもタイトなやりくりで頭が一杯で、今は考えられないのだ。「でも、もう少し落ち着いたら、お願いします」ということだった。

 「比較する」「近未来を考える」「計画を立てる」「決断する」が苦手、あるいは後手に回りがちであるというパターンは、経済的にタイトな状況にある人々に多く見られる。思考力のほとんどが、やりくりの努力や、危機を綱渡りのように乗り切ることへの集中に費やされる結果である。やりくりの苦心は、会社員家庭でも日常的に行われていることではあろう。しかし収入の総量があまりにもタイトすぎる場合、落ち着きや考える余裕まで奪われてしまうことがある。

 馬場さんがもう少し、本格的に家計を見直し、自分自身の活動を展開させ、少しでも収入につなげるためには、「いま」の家計を安定させる必要がある。どうすれば可能だろうか?

まとめ支給の罠から逃れる道はどこにある?

 馬場さんは、知る人ぞ知る映画マニアである。人情や映像表現の機微をうがった映画評論は、数多くの人々に評価されている。文章力も「作家」を名乗っていただきたいレベルだ。3人世帯・2人世帯時代の2014年には、スマホを使ってビデオインタビューシリーズも作成していた。私もインタビューを受けた一人だが、インタビュー内容にも話運びのリズムにもカメラワークにも唸った。馬場さんは映画から、どれほど多く深く学んだのだろうか? 思わず、尊敬の念を抱いた。

 でも現在の馬場さんは、家族と家族分の生活保護費を同時に失い、生活を再建する途上にある。とても、表現活動ができる状態ではない。唯一の気晴らしは、アイドルイベントへの参加だ。それを「浪費」と見られる可能性は、なくはないだろう。

 「でも、チケット代が高いとは思っていません。家族はいません。誰かに迷惑をかけているわけではありません」(馬場さん)

 具体的には、どの程度?

 「ファンクラブの会費が年間5000円です。チケットは、会員割引があるので、一回7000円です。他に交通費がかかります。多い年は年間12回くらいでした。今はそんなに行けていませんが」(馬場さん)

 年間12回としても、1ヵ月あたり1万円程度だろう。生きる気力や生活をより良くする活力に結びつく「1ヶ月あたり1万円」は、責められるべきなのだろうか? 

 私は、もしも日常的に接触のある範囲に生活保護で暮らす方がいるのなら、自分なりに人生を楽しんでいてほしい。「苦しい」「辛い」という話ではなく、限られた予算の中で自分の生きがいを楽しんでいる話を、輝いた表情で語ってほしい。その視点から見て、「1万円」は高価とは思えない。精神医療で同じ効果を挙げることがもし可能であるとしても、「コストパフォーマンス」は、精神医療の方が圧倒的に悪いはずだ。

 しかし、コンサートで生活が逼迫するということはないだろうか?

 「それはないです。米は毎月5kg買って、翌月に残すようにしています。もし、もう少し余裕があれば、10kgの買いだめができるのですが。それに、今、外にあまり出ないようにしているんです。外に出ると、お金かかりますから。家にいるだけで節約できます」(馬場さん)

 家計指導は受けてみたいと思わないのだろうか?

 「それに近いことは、最近、来てもらうようになった訪問医療の人に言われています。イベントのチケットを買うな、と。だからイベントの話題にならないように注意して会話しています」(馬場さん)

 生活保護ケースワーカーや社会福祉協議会を通じて、ファイナンシャル・プランナーの家計指導を受けると、同様の結果になりそうだ。でも、限られた収入の中で、自分の希望を尊重し、自分の望む近未来を実現するという目標があり、その目標のための家計指導なら? 馬場さんは「もし、あるのならば、受けてみたい」ということである。

 今後については?

 「就労は……努力はしました。一時期、派遣で工場労働もしてみましたが、無理だと思いました。もし、自分が無理をせずに、精神の持病を悪くしないで出来る仕事があるのなら、やってみたいです。それで生活保護から抜け出せるなら、言うことありません」(馬場さん)

 実現の可能性は?

 「現実的には、かなり厳しいと思います。もう54です。あと6年で還暦です。いったん就労できたとしても、続けることはかなり難しいと思います。結局は、生活保護のお世話になると思います」(馬場さん)

「月にあと1万円あれば乗り切れる」

 馬場さんは、生活保護に対する憎悪のような感情も抱きながら、生活保護で生活している。

 「生きるために必要だから、生活保護なんです。そうでないと、自分の場合、ホームレスになるしかないんです。あるいは、犯罪者か。選択肢がそれくらいしかないんです」(馬場さん)

 それを望んでいるのだろうか?

 「『このまま埋もれてたまるか』という気持ちはあります。『日陰者だから、一発やらかして注目受けたい』という気持ちもあります……犯罪で認めてもらおうというのは、間違った方向だと思いますけど、そういう発想になってしまいます」(馬場さん)

 注目を受けたいのは、なぜ?

 「怒りです。『オレの存在を無視するな』と言いたいんです。自分は、ここに存在しているんだということです。生活保護であれ、障害者であれ、納税者と同じように生きているということです」(馬場さん)

 馬場さんが、やけっぱちの「一発やらかす」を避けるために必要なのは、まずは家計の安定だろう。そのためには何が必要だろうか?

 「年金を、毎月支給にしてほしいです。そうすれば、2ヵ月ごとにお金が入って、支払って、お金がなくなって、ガマンして……という生活ではなくなりますから」(馬場さん)

 もし、年金の支給パターンが今と同じだったら、保護費があと何円あれば、何とかなるだろうか? そう問いかけると、馬場さんは

 「保護費がもっと必要……と言って……いいんですか?」

 と口ごもった。私が「もちろんですよ!」と言うと、馬場さんは迷いながら語り始めた。

 「あと1万円……です。1万円あれば、2ヵ月ごとの収入の『ガタガタ』があっても、なんとか乗り切れて、生活を安定させて、きっと……また表現をしていくこと、次に、表現して少しずつお金にしていくことを……考えられると思います」(馬場さん)

 最後の方は、はっきり、きっぱりした口調であった。

 もしかすると馬場さんは、年金の隔月支給による実質的損失を金額として語った、最初の生活保護当事者かもしれない。勇気に、「よくぞ言ってくれました」と感謝する。

 年金を毎月支給にするか、保護費を増額するか、せめて2013年7月の減額以前に戻すか。あるいは、理解あるファイナンシャルプランナーを本人が選択できる制度を新設するか。

 いずれにしても必要なのは、生活保護で生き、暮らす人々の顔や表情や声や息遣いに接し、「その人々にとっての」生活実感を理解することではないだろうか?

 2016年5月27日に再開した社保審・生活保護基準部会と厚生労働省は、生活保護で生きる人々の姿や声に、どの程度の関心を抱いているのだろうか? 

 ともあれ本連載では、次回も、生活保護に近い立場で生きる方々の声を紹介する予定である。

ダイヤモンド・オンライン


化粧をすると健康になる!? 視覚障害者や高齢者の「美しくありたい」を支えるケアメイクの驚くべき効果

2016年06月18日 03時22分46秒 | 障害者の自立

視覚障害者や高齢者の「美しくありたい」を支えるケアメイクの驚くべき効果

 製薬会社ファイザーの社会貢献事業「ファイザープログラム~心と体のヘルスケアに関する市民活動・市民研究支援」のプレスセミナーが6月3日に都内で開催された。今回のセミナーのうち、化粧を通じて視覚障害者をサポートする日本ケアメイク協会の講演について紹介する。

■女性の「美しくありたい」という尊厳を支える

 同協会の講演は「視覚障害者の『化粧をしたい!』を応援するプロジェクト」と題し、視覚障害者への「ブラインドメイク」の効能効果を医療・福祉の観点から考えるというもので、実際に視覚障害者の女性が壇上でブラインドメイクの実演を行った。

 同協会代表の大石華法さんが考案した「ケアメイク」は、障害や疾病、加齢などで、メイクをしなくなったり、できなくなった女性の「美しくありたい」という尊厳を支えるものだという。

 中でも視覚障害者が自ら行う化粧法がブラインドメイクで、その実演をした松下恵さんは41歳で網膜剥離によって視力を失った中途視覚障害者。大石さんから1時間のレッスンを10回ほど受けて技術を習得した。

 松下さんは、フェイスブラシやビューラー、マスカラコームなど、一般的な化粧道具のほか、耳かきやテープ、そして自らの指を使ってきれいに仕上げていく。とても視界の閉ざされた状態で仕上げたとは思えないほど、違和感なく自然なメイクが完成した。

 このメイク技術を習得したことで、「正直に生きられるようになりました。顔を上げて道を歩けるようになったんです」と松下さんは喜びを語る。

■化粧が介護費用の削減につながる例も

 大石さんは、ケアメイクの効果について次のように述べた。

「以前、化粧をしていた記憶があった方に、思い出していただくのです。認知症で口紅を食べていた人が、口紅を塗るようになる。夫や子どもに『きれい』と言われて、にこっとするんです。鏡を見るようになる。できなかったことが、できるようになります」

 大石さんによると、実際に資生堂の研究では、化粧によってADL(日常生活動作)が向上するという結果が出ているのだという。ひいては、介護費用の削減につながるというデータもあるとか。

「年配の人ほど変わります。少女時代を取り戻すようです。あきらめて、化粧品売り場に近寄らなかった人が外に出るようになり、人とのつながりを取り戻し、しゃべれるようになるんです」(大石さん)

 単に装ったり飾ったりする表面的な効果だけでなく、人の精神や健康状態まで左右する、驚くべき力を持つ化粧。超高齢化社会において、その可能性は、今後まだまだ広がり、重要性を増していくのではないだろうか。

日本ケアメイク協会の大石華法代表

2016.06.16   サイゾーウーマン


障害者の3割「避難できず」 「地域とつながりない」22% 別府市、熊本地震で亀川地区調査

2016年06月18日 03時18分13秒 | 障害者の自立

 別府市は、同市亀川地区の障害者を対象にした熊本地震に関する聞き取り調査結果を公表した。およそ5人に1人が日頃から地域とのつながりがなく、避難をしたかったができなかった障害者が3割いた。市は「普段から地域とつながり、災害時には駆けつけてくれる体制を整え、命と暮らしを守る仕組みをつくりたい」としている。

 調査は5月9~13日、障害者の防災対策に取り組む市民団体「福祉フォーラムin別杵速見実行委員会」などと共同で101人から聞き取った。年代は20~80代、1人暮らしは22%。

 それによると、「日頃からどんな人とつながっているか」との質問に「隣近所」が63%、民生委員17%、自治委員10%で、「特につながりなし」との回答が22%。「民生委員がいつも代わり覚えられない」「障害者の友人とは連絡を取った」などの声が寄せられた。

 避難をしなかったのは74%。うち「避難ができなかった」と回答したのは41%で、全回答者の31%に上った。地震直後から数日間で困ったことでは「睡眠」(47%)、「入浴」(17%)、「食事」(12%)が多く、「トイレやエレベーター、移動についても問題視する意見が少なくなかった」(市危機管理課)という。

 「知りたい情報が得られなかった」との回答は18%。市が作成した防災マップや福祉避難所などについて「いずれも知らない」と回答したのは46%に上った。

 市内には災害時に支援が必要な高齢者や障害者など災害時要援護者が約6千人いる。市は現在、市内の地域包括支援センターや自治会などと連携し、高齢者に地域と医療、福祉サービスを一括提供する地域包括ケアシステムの中に、障害者を組み込んだ形での仕組みづくりを模索している。今回の調査もこの仕組みづくりに生かしていく。

=2016/06/17付 西日本新聞朝刊=


高齢者・障害者らの安否確認  要支援者名簿生かせず難航

2016年06月18日 03時11分27秒 | 障害者の自立

 熊本地震では、介護を必要とする高齢者や障害者らの安否確認と避難に、課題を残した。多くの自治体は事前に要支援者名簿を作っていたが、管理システムがダウンしたり、情報が古かったりした。普段から名簿を外部に提供する場合は、記載された本人の同意が必要で、災害対策のハードルになっている。

 ■更新

 政府は平成25年、災害対策基本法を改正し、支援が必要な人の名簿作成を市町村に義務付けた。東日本大震災で65歳以上の死者が全体の6割を占め、障害者の死亡率は住民全体の約2倍に達したからだ。

 総務省消防庁によると、昨年4月時点で全国の市町村の52%が名簿を作成済みで、今年3月までの作成予定を含めると98%に上った。だが、熊本地震の例からは作った後の運用に課題が浮かぶ。

 2度の震度7に襲われた熊本県益城町は、約2400人分の名簿データを準備していた。ところが、地震後、役場に入れず、パソコンも動かなくなり、5月上旬まで閲覧不能に陥った。結局、医療団体が避難所を回るなどして安否を確認した。町の担当者は「名簿を印刷し、紙で保存しておくべきだった」と悔やむ。

 同県嘉島町は名簿の更新が滞り、亡くなったり、引っ越したりした人が載ったままだった。慌てた担当者は、地域の団体が作っていた別の名簿を使って安否確認を進めた。同県宇土市でも、安否確認先として掲載された近親者に電話すると同居しておらず、逆に安否を尋ねられたケースがあった。

 ■安心

 行政に代わり、活躍したのが民間団体だ。社会福祉法人「熊本県視覚障がい者福祉協会」が運営する熊本県点字図書館(熊本市)は、利用者名簿や、県が開示した視覚障害者手帳を持つ人の情報を基に、13市町村計約1900人に、電話や戸別訪問をした。篠原静雄館長(54)は「必要な物資や困ったことも聞いた。細やかな支援で民間が担う役割は大きい」と指摘した。

 益城町の自宅が全壊した大西光さん(72)は、緑内障を患う。避難所にいた4月16日、点字図書館の職員から携帯電話に連絡があった。「身の回りのことまで相談に乗ってくれて安心した」と振り返った。

 ■同意

 災対法は平常時から消防や警察、民生委員、自主防災組織に名簿情報を提供すると規定する。ただ、本人の同意が得られた場合に限られ、同県阿蘇市の担当者は「同意しなかった人にも支援は必要だ。個人情報との兼ね合いが難しい」と漏らす。

 自治体が条例で規定を設ければ、本人の同意なしに外部へ提供でき、支援の実効性を高めることになる。しかし、熊本市の担当者は「内容を詳しくするほど外部提供は難しい。精神疾患や持病などプライベートな情報まで、(自治体が)勝手に提供できるようにする条例は現実的ではない」と説明した。現状では戸別訪問で一人一人理解を得るしかない。

 東日本大震災の際、福島県南相馬市から名簿の提供を受けた同市のNPO法人「さぽーとセンターぴあ」の郡信子施設長(55)は「個人情報を守っても、命を守れなければ意味がない」と語った。当時、名簿の情報が古く、市に障害者手帳を持つ人の情報を求めたが、開示まで2週間以上かかった。郡氏は「使える名簿が手元にあり、すぐ支援に動ける環境が必要だ」と訴えた。

避難する高齢者や障害者ら。熊本地震では災害弱者への支援が課題となった

避難する高齢者や障害者ら。熊本地震では災害弱者への支援が課題となった

2016.6.17  産経ニュース