障害者雇用率の達成を複数企業による合算でも可能とした中小企業向けの「事業協同組合等算定特例」で、兵庫県内の中小企業やNPO法人などでつくる「ひょうご障害者福祉協同組合」(姫路市)が4月、厚生労働省の認定を受けた。全国ではビルメンテナンス関連の3団体が認定を受けているが、異業種が参加した特例認定は全国初。
1社では障害者の法定雇用率(従業員50人以上の企業で2%)達成が難しい中小企業向けに2009年、特例が創設された。対象は事業協同組合や水産加工業協同組合、商工組合などで、障害者が担いやすい名刺作成や清掃業務などを一括して請け負うことで雇用創出が期待されている。
ひょうご障害者福祉協同組合は、障害者雇用に積極的な兵庫県内の15社・団体で15年2月に結成。このうち、従業員が50人以上いる福伸電機(福崎町)▽障害者福祉のNPO法人「はりま福祉会」(姫路市)▽岡野食品産業(同)▽オカノべーカリー(同)▽燃料販売のダイネン(同)-の5社・団体で障害者雇用率を合算する。
現時点の雇用率は、組合事務局員を含めて2・4%。今後、毎月5万円を目安に参加企業が備品を発注し合うなどして仕事量や売上高を増やし、組合として雇用率を高めていく。年内には参加企業を増やす考えで、本條義和理事長は「さらに幅広い雇用を生み出したい」と話す。
兵庫県内の障害者雇用率は15年6月1日時点で1・97%と全国の1・88%を上回る。ただ、中小企業は1・87%で大手の2・03%より0・16ポイント低い。
■異業種の特性生かし、相互発注へ
異業種でつくる協同組合として全国で初めて「事業協同組合等算定特例」の認定を受けたひょうご障害者福祉協同組合(姫路市)。同業の組合を含めても4例目で、兵庫県内では初めて。広がらない中小企業の障害者雇用に一石を投じた形だ。
障害者の法定雇用率は、達成できないと、従業員100人超の企業で1人当たり月4万~5万円の納付金を支払うことになる。
県内では従業員千人以上の企業は70%がクリア。しかし、100~300人未満は56%、100人未満は48%しか達成していない。
大手はグループで雇用率を算定できる特例子会社制度をうまく活用する。同制度は1976年に始まり、県内では川崎重工業(神戸市中央区)など12社が利用。制服のクリーニングなどを担う子会社を設け、まとまった雇用を創出している。
一方、中小企業向けの事業協同組合等算定特例は、活用が進まない。厚生労働省の担当者は「既存の組合では、障害者雇用に対する各社の理解に差があり、足並みがそろわない」と指摘する。
ひょうご障害者福祉協同組合の誕生は、本條義和理事長=NPO法人「はりま福祉会」理事長=の果たした役割が大きい。障害者雇用に前向きな企業を訪問して幹部らに趣旨を説明し、4年かけて結成にこぎつけた。
異業種の特性を生かして互いに備品を発注する取り組みは、加盟各社の業務の増加や売り上げアップにつながる。障害者雇用の基盤を整えることになる。
本條理事長は今後、福祉施設運営のノウハウを活用して、障害者の特性を生かす職場環境づくりなど、労働に関する助言も行う。
厚労省は「障害者雇用を共通項として異業種が結び付く動きが広がるきっかけになれば」と期待している。
ひょうご障害者福祉協同組合の冊子を手にする事務局スタッフら
2016/6/4 神戸新聞NEXT