「歩笑夢」が自作した曲「19の軌跡」に共感の輪が広がる
昨年7月に起きた相模原市の障害者施設殺傷事件を風化させまいと、埼玉県で活動する3人組音楽バンド「歩笑夢(ぽえむ)」が事件で亡くなった19人への思いを込めて自作した曲「19の軌跡(きせき)」を街頭で歌い続けている。ボーカルは全身に障害を持つ見形(みかた)信子さん(48)。「いらない命なんてない」との思いから事件後に作詞し、共感の輪を広げている。
「僕らはちゃんと生きてきたよ/(中略)風や空や海だって感じることができたのに/僕らをどうして不幸せと、勝手に決めるのか」。
事件後、19人への殺人罪などで起訴された植松聖被告(27)が障害者を差別するような発言をしていると知った。衝撃を受けたが、19人が歩んだ人生を思い「19の軌跡」を作詞した。「僕らがなんにもできないなんて、なんで決めるのさ」と訴える歌詞と透き通る歌声は動画投稿サイト「ユーチューブ」などを通じて広まっている。
作曲はギターの新島さんが担当した。新島さんは「自分の中にもいまだにどこかで差別意識がある」といい、だからこそ歌い続けないといけないと感じている。17日午後1時から横浜市のJR桜木町駅前で街頭コンサートを開く予定だ。
歩笑夢の訴えは海外へも広がる。1年前、事件が起きた7月26日は、27年前に米国で障害者差別を禁じるアメリカ障害者法(ADA)が制定された日でもある。25日には世界中の障害者団体がワシントンに集まってパレードし、見形さんらが英訳した「19の軌跡」が披露されるという。見形さんは「子どもや若い人にも事件の存在を知ってほしい」と話す。
トルコで18日に開幕する聴覚障害者の4年に1度のスポーツ大会「夏季デフリンピックトルコ大会」の女子やり投げ競技で、沼津市の高橋渚(28)=明電システムソリューション勤務=が3度目の出場を果たす。前回大会後に出産、子育てを経験。「応援してくれる家族や仲間に恩返ししたい」と同大会初のメダルを狙う。
奈良県出身の高橋は高校時代にやり投げを始め、結婚を機に沼津市に移り住んだ。陸上を通じて知り合った夫の啓太さん(37)と二人三脚で練習を積み、2012年の世界ろう者陸上競技選手権で優勝。2度目となった13年デフリンピックは4位で、あと一歩メダルに届かなかった。
14年に長男陸太君を出産後は競技を離れて仕事と子育ての両立に奮闘し、競技復帰を一度は諦めた。しかし、15年に中部実業団対抗戦陸上競技大会で3位に入賞。同年のアジア太平洋ろう者競技大会でも以前の記録を落とさず2位に入賞したことで「まだやれる」と感じ、再び世界に挑戦することを決めた。
苦労したのは、出産後に大きく変わったフォームへの対応。投げ方が力任せになり肩を痛めたこともあったが、啓太さんと話し合いながら少しずつ改善に取り組んだ。子育てで日々の練習時間はほとんどなく、年数回の強化合宿など限られた機会に集中し、16年10月にデフリンピック出場のための標準記録をクリアした。
3歳になった陸太君は、一緒に練習しながら「頑張れ!」と励ましてくれる存在。試合は27日の予定で、高橋は「子どもに活躍している姿を見せたい。デフリンピックについても多くの人に知ってほしい」と意気込んでいる。
友人から応援旗を受け取り、笑顔を見せる高橋渚(左)
2017/7/14 @S[アットエス] by 静岡新聞
障害の有無に関わらず誰もが囲碁を楽しめる磁石式のミニ碁盤を開発した「日本視覚障害囲碁普及会」(事務局・大阪府吹田市、代表幹事・湯川光久九段)が、14〜17日に兵庫県宝塚市で開かれる囲碁の国際的な祭典「ジャパン碁コングレス」に初参加し、障害者の囲碁文化の世界発信を目指す。事務局長の宮野文男さんは「中途失明者は碁を諦めてしまう人も多い。視覚障害者の励みになれば」と話している。
同普及会は約25年前に設立。目が不自由でも触って白黒が判別できるように凹凸を付けた碁石とミニ碁盤を開発した。囲碁は通常、縦横19本の線がある「19路盤」を使うが、同普及会では縦横9本の「9路盤」を活用。宮野さんは「9路盤だと目が見える、見えないに関係なく互角に楽しめて、囲碁や視覚障害者の可能性も広がる」と話し、世界の囲碁ファンが集まる今回の祭典でこの9路盤をアピールすることにした。
祭典では、同普及会会員が9路盤の対局のデモンストレーションをするほか、各国からの参加者と実際に対局。希望者にはアイマスクをして、ミニ碁盤の体験もしてもらう。また、加藤俊和・日本盲人福祉委員会評議員が視覚障害者の囲碁の意義なども講演する。
祭典は欧米で人気の囲碁イベントで、日本開催は今年が2回目。同普及会は14〜16日の午前11時〜午後4時、対局に参加する。
磁石式のミニ碁盤で熱戦を繰り広げる囲碁大会参加者ら
毎日新聞 7月13日
埼玉県上尾市の障害者支援施設「コスモス・アース」で男性利用者(19)が車内に約6時間放置され死亡した事故で、県は14日、職員の1人が13日の昼食時に男性が施設にいないことに気付いたのに、確認を怠ったと明らかにした。県は、連絡体制に不備がなかったかさらに詳しく調べる。
県によると、職員の1人は手つかずで残っていた男性の昼食を見て不在に気付いたが、他の職員との間で情報は共有されず、捜したり家族に連絡したりしなかった。
施設の大塚健司管理者(75)は県の聞き取りに「遅刻したり欠席したりする利用者がいるため、見過ごしてしまった」と説明したという。
(共同通信) 沖縄タイムス 2017年7月14日