企業などに障害者を一定割合以上で雇用するよう義務付ける障害者雇用促進法が改正され、4月から雇用率が引き上げられた。従来の知的・身体障害者に加え、新たにそううつ病や統合失調症などの精神障害者も雇用義務の対象となった。
企業や自治体は雇用促進はもちろん、障害者の特性に応じた配慮や環境づくりが求められている。
障害者の雇用率は4月から、企業が2.2%、国や自治体が2.5%、教育委員会が2.4%とそれぞれ0.2ポイント増えた。2020年度末まで、さらに各0.1ポイント上乗せされる。対象となる企業規模も従業員50人以上から45.5人(短時間労働者は0.5人で計算)以上と拡大された。
昨年6月1日時点の雇用率を見ると、東北6県では福島と宮城が全国平均1.97%を下回っている。特に宮城は14年、15年と2年連続で全国最下位となっており、障害者雇用は遅れていると言わざるを得ない。事業主らは企業の社会的責任を自覚する必要があるだろう。
宮城県では17年、従業員50人以上の企業の雇用障害者数は5357.5人と過去最多だったが、雇用率は1.94%で全国42位と下位に甘んじた。雇用率の未達成企業は46.8%で、その6割は一人も障害者を雇っていない。
さらに、範を垂れるべき宮城県教育委員会も昨年6月時点で法定雇用率に達せず、自治体も登米市や角田市など10市町で法定雇用率を満たしていなかった。
そうした中で、全国的にも先駆的な取り組みをするのが栗原市の関係者たちだ。
旧10町村が合併する前の03年、保健所や職業安定所、企業などが連携して障害者就労を支援する「ネットワーク会議」を設立。05年の合併後は名称を変えて活動し、就労セミナーを14年間開催したり、企業訪問したりしている。官民協働のネットワークがすっかり地域に定着した。
それに加え、実習や訓練、就職後のサポートなどに保健師やNPO関係者、事業主らが携わるネットワークも機能し、障害者が孤立しないよう一人一人を支えている。
そうした取り組みは他の地域でも参考になるのではないか。各地域が就労支援の枠組みを模索するべきだ。特に企業が集中する仙台市は、官民が連携して障害者の社会参加を充実させてほしい。
企業も単に雇用すればそれでいいわけではない。事業主や職場の人が、障害特性に関する正しい知識を得て理解を深めることが重要となる。障害者が働きやすい環境かどうかは、働き手を大事にする企業かどうかを測る指標の一つともなるだろう。
障害者にとって、就労は社会的自立につながる第一歩。障害のある人もない人も共に働くのが当たり前の社会を築きたい。
2018年05月19日 河北新報