障害者雇用促進法の改正で4月から雇用割合や範囲が拡大されたことを背景に、障害者雇用に積極的に取り組む企業が注目されている。ハンディキャップのある人でも特性に配慮して働き方を工夫、能力を発揮して重要な役割を果たしている企業が見られ、改革の先行事例になっている。
◆手作業に手応え
障害者雇用促進法は、企業に一定数の障害者雇用を義務付ける法律。法定雇用率が2・0%から2・2%に引き上げられ、対象となる障害者の範囲も広がった。
ハウス食品グループのハウスあいファクトリー(大阪府東大阪市)は同市の工場で、香辛料の袋詰めや瓶詰めなどを手掛けている。百貨店などで販売される上級品だ。
「不良品は注意して廃棄して」「原材料の唐辛子が足りなくなるから持ってきて」
聴覚障害者が多いため、会話は手話や筆談が中心だ。ラインの稼働状況を示すランプは一般的な工場よりも多めに設置している。
同社は平成21年、障害者に働きがいをもって仕事をしてもらうことを目的に設立された。半数以上が障害者だ。長く勤務することで技能を習熟、雇用する側にもメリットがある。
袋詰めは機械作業が目立つが、多品種少量生産の同工場では人手による作業が必要になっている。働いている障害者は「できるところまでやり切ったと、手応えがある。お客さんに自分が関わった商品が届くのはうれしい」と話していた。
◆生産方式切り替え
ソニー・太陽(大分県日出町)はソニーの子会社で、昭和53年に創業者の井深大氏が中心となって設立、40年の実績を持つ。高音質の「ハイレゾ」に対応したマイクロホンやプロ用のマイク・ヘッドホンセットなどを手掛けている。社員約170人のうち、6割以上を障害者が占める。
一人一人の特性に合わせ生産方式を選択しているのが特徴だ。ある社員は組み立てなどで高い技能を持っていたが可動範囲が限られ、周りの社員との連携が難しかった。
そこで1人で1つの製品を仕上げる生産方式に切り替え、活躍している。培ったノウハウはほかの部署でも応用、グループ全体での活用も進められている。
社員からは「一人の社会人、エンジニアとして扱われ、やりがいを感じる。厳しいが、応えたいと思う」との声が聞かれた。
2018.5.10 産経ニュース