日本財団(笹川陽平会長)と就労継続支援A型事業所全国協議会(全Aネット、久保寺一男理事長)は4月27日、障害者の就労についてオランダとドイツを視察した結果の報告会を衆議院第1議員会館で開いた。視察に参加した国会議員からは「日本も包摂型にかじを切るべきだ」(穴見陽一氏・自民)との声が上がった。一般就労に近い環境で働く「ソーシャルファーム」を推進する動きが議員連盟で加速しそうだ。
今年1月14日から21日の視察に参加したのは与野党の国会議員6人と日本財団、全Aネットの役員ら計17人。両国とも近年新法を制定し、保護就業(日本の就労継続支援A型、B型に相当)を縮減している。
ドイツは2015年3月、国連の障害者権利委員会から障害者作業所を段階的に廃止するよう勧告され、「日本も近いうちに勧告されるだろう」(視察団の岩田克彦・全Aネット顧問)と見られている。
視察団長の藤末健三氏(無所属)は、両国が保護就業からソーシャルファームに転換を図っている点に着目。特に(1)障害者に限定せず刑務所出所者らも包摂する(2)最低賃金と障害者の収入の差額を公的に補てんする(3)事業者の経営努力を促すーーの3点がポイントだと報告した。
ソーシャルファームとは、労働市場で働くことが不利な障害者などが全従業員の3割以上を占める事業体のこと。ビジネス的手法を用いて従業員が対等に働く。「包摂的な働き方」「中間的な就労」などとも呼ばれる。
視察に参加した里見隆治氏(公明)は「障害の捉え方が日本との最大の違いだ」と指摘。障害者手帳を持っていない人でも働きにくさを抱える人は多数いることから、日本でもそうした人を幅広く捉えるべきだとした。
穴見氏はそうした実態を把握する統計調査が日本にないことを問題視。その改善に向けて超党派の議員連盟で政府に改善を働き掛けているとした。また、省庁の壁を越えた就労支援の仕組みをつくるには、新法の制定が必要だとも語った。
日本では近年、「障がい者所得倍増議連」(鴨下一郎会長)、「ソーシャルファーム推進議連」(田村憲久会長)、「インクルーシブ雇用議連」(川崎二郎会長)が発足するなど、超党派で障害者の働き方を改革しようという機運が高まっている。
日本財団は今年6月、潜在的な労働力を把握する基礎調査の結果を発表し、新たな就労支援モデルづくりを始める方針。視察団の報告書は5月下旬にも全Aネットのホームページに掲載される。
視察に参加した穴見議員(立つ人)ら
2018年05月16日 福祉新聞編集部