タイトル日本名「桃(タオ)さんのしあわせ」 英語名「A simple life」。
60年あまり、ある家族の世話をしてきた家政婦さん「桃」。いまはこの家の主となった雇い主の息子ロジャー。桃がある日、脳卒中で倒れ家に居なくなったときはじめてロジャーは桃の存在の大きさに気づく。そして仕事の合間を見つけて、親身になってその介護にあたる。桃さんには世話した家族しか身寄りはいないのだ。体が不自由になった老女を自宅で介護することは仕事を持った人間にはできないことだ。彼女は老人ホームに入りそこで生活することになった。映画は老人ホームの生活を映し出してゆく。
それにしても人生の終わりに近くなった人たちは、多様な環境に置かれることになるのだなーとつくづく思う。自転車にはねられた、酔って階段から転げ落ちた、風呂で転んで頭打って神経がおかしくなった・・・体が不調になる要因は老人のみならず壮年においてもごく身近なことだ。そのような状況に自分が置かれたらどうするのだ、どうされるのだろうかということのほうが、観ていて強く感じた映画だ。桃さんはロジャーのように気がついて親身になって看取ってくれた人間がそばにいてくれて幸せだったかもしれない。少なくとも孤独のうちに亡くなるということはなかったのだが。 考えさせられるキッカケがたくさんある映画だった。