中秋の名月の10月4日に奈良・猿沢池で行われた、采女祭(うねめまつり)の続きです。
奈良時代の伝説に基づく幻想的な行事。
伝説については、奈良市観光協会のページから引用させてもらいます。
『猿沢池の西北の隅に鳥居を背にした珍しい後ろ向きの神社があります。 これが采女神社で『大和物語』によりますと「奈良時代に帝に仕えていた采女(後宮で帝の給仕をする女官の職名)が、帝のご寵愛が衰えたのを嘆いて猿沢池の池畔の柳に衣を掛け、入水したので、その霊を慰めるために社を建てた。しかし、采女は我が身を投じた池を見るにしのびないと一夜のうちに社を後ろ向きにした。」と伝えられています。』
祭はこの采女の霊を慰めるもので、午後5時から祭の参加者による花扇奉納行列、午後6時から采女神社で神事。続いて午後7時から猿沢池で管絃船の儀がありました。
今回は管絃船の儀だけ撮影しています。
猿沢池と中秋の名月(Photoshop で比較明合成)。
最初に、采女伝説を語る『采女うたものがたり』(中橋怜子さん)が、池をめぐる船の上で演じられました。
采女の悲しい物語をドラマチックに歌い上げる中橋怜子さん。
大勢の人が見守る中、雅楽の響きとともに2 隻の管絃船(龍頭・鷁首)が池の上をゆっくり、滑り出します。バックにはライトアップされた興福寺の五重塔。
龍頭(りゅうとう)の管絃船。
船の上には、秋の草花で作られた長さ2メートルの花扇や花扇使ら。
十二単姿の花扇使(右)。
流し灯籠の間をぬって進む、鷁首(げきしゅ)の管絃船。
鷁首は想像上の鳥で、何となく手塚治虫の「火の鳥」のよう…
鷁首の管絃船。
鷁首の管絃船には、白拍子姿の女性たちや「ミス奈良」、奈良市の姉妹都市・福島県郡山市から参加した「ミスうねめ」らが乗船。
郡山市の「ミスうねめ」(手前の2 人)。
同じように采女伝説がある郡山市では、毎年8月に「うねめまつり」が盛大に行われ、公募で選ばれた「ミスうねめ」が参加。奈良からも「ミス奈良」や関係者が招待されているそうです。
管弦の儀の最後に、池の中央で花扇が水中に投じられ、采女の霊を慰めました。
池に投じられる花扇。
◆2 つの采女伝説
ところで、福島県郡山市にある采女伝説についてですが、その内容はかなり異なっています。
以下、「うねめまつり」のホームページから引用させてもらいました(かなり長いです)。
『約千三百年前、陸奥の国安積の里(現・郡山市)は冷害が続き朝廷への貢物ができないほどだった。このため奈良の都から巡察使葛城王が訪れた。
里人たちは窮状を訴え貢物の免除をお願いした。しかし、その願いは聞いてくれなかったという。
その夜、王をもてなす宴が開かれ、王は里長の娘、春姫を見そめた。春姫は心から王をもてなし、
安積山影さえ見ゆる 山の井の 浅き心を我が思わなくに
どうしてご機嫌が悪いのですか。安積山のふもとに山の井の清水があります。
安積山の影を水面に映し、浅い井戸のように思われますが、どうして、どうして、とても深い清水です。
それと同じで私たちが王をお慕いしている気持ちはとても深いものです。どうかご機嫌を直して下さい。
「安積釆女とその時代」より(今泉正顕氏著)
と詠み献上した。
王は大変喜び、春姫を帝の采女として献上することを条件に、貢物を三年間免除することになった。春姫には、次郎という相思相愛の許嫁がおり、悲しみをこらえて別れた。
都での春姫は、帝の御寵愛を受けていたが、仲秋の名月の日、次郎恋しさに猿沢の池畔の柳に衣をかけ、入水したように見せ、愛する次郎の待つ安積へ向かった。
里へたどりついた春姫は、次郎の死を知り、雪の降る夜、あとを追って次郎と同じ山の井の清水に身を投じた。やがてみちのく安積の里にも春が訪れ、山の井の清水のまわり一面に名も知れぬ薄紫の美しい可憐な花が咲き乱れていた。
だれ言うともなく、二人の永遠の愛が地下で結ばれ、この花になったのだと噂をした。「安積の花かつみ(学名ヒメシャガ)」とは、この花のことです。この采女物語は今、郡山の夏の夜を彩どるうねめまつりとして受けつがれております。』
奈良も郡山も、どちらの伝説も、物悲しいですね。
こうした悲しいことが起きないようにということか、猿沢池の采女神社は縁結びの神社となっています。
縁結びのお守りや絵馬が並んでいました。
采女神社。鳥居の奥に、猿沢池に背を向けた社殿が。
記念撮影に応じる「ミス奈良」のみなさん。
このお祭り、とにかく大変な人出。猿沢池の周りに並ぶ露店もにぎわっていました。
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撮影カメラ・レンズ
キヤノンEOS 6D Mark II
EF70-300mm F4-5.6L IS USM
ソニーRX100
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