ツァイスが10月初めに発表した大口径標準レンズの性能がすごい、とネットで話題になっています。
Carl Zeiss Distagon T* Otus(オ―タス) 55mm F1.4 がそれ。(写真はツァイスの製品情報ページ より)
ニコンFマウント用(ZF.2) とキヤノンEFマウント用(ZE)があります。
ツァイスの製品情報ページなどによると、主なスペックは次の通り。
焦点距離 55 mm
絞り値 f/1.4 – f/16 (ニコン用は絞りリングあり)
撮影距離 0,5 m – ∞
レンズ構成 10群12枚
フィルター径 77mm
サイズ (キャップも含む) ZF.2: 全長141 mm
ZE: 全長144 mm
重さ ZF.2: 970 g
ZE: 1030 g
見たところ、単焦点の標準レンズとしては、全長が長く、重い。これはさまざまな収差を徹底的に抑え込むため、 非球面レンズや異常部分分散性の特殊ガラス製レンズを惜しげもなく使用しているためのようです。
残念ながらAFはありません。マニュアルフォーカスになります。
国内では、幕張メッセで11月13日に開幕したイベント「InterBEE 2013」(国際放送機器展)で参考出品され、デジカメWatch がレポートしていました。
それによると、
『説明員によると「コストや技術の制限を外し最高の画質を目指して開発した。カールツァイス100年の集大成になるレンズ」という。カールツァイスの静止画用レンズだけでなく、映画用レンズの技術も取り入れたとする。「解像力を重視して設計した。現在は3,600万画素が一眼レフカメラの上限だが、今後登場するであろう4,000万画素、5,000万画素といったカメラにも対応する」(説明員)とのこと。(中略)設計はドイツで製造は日本。製造メーカーは明らかにしていない。カールツァイスによると日本ではコシナから発売されるという。』
また同記事によると、日本での発売は2014年の春~夏。国内の価格は未定。米国での価格は3,999ドル。
現時点(11/27)の相場で40万円以上! びっくり仰天の価格。
いくらなんでも、これは手が届きません。一部のプロ向きの超高級レンズ。
とはいえ、現時点で世界最高といわれる性能は気になります。ニュースをフォローしているうち、DxOMark からニコン用、キヤノン用両方のスコアが出そろったのでまとめてました。
(ニコン用のレビュー / キャノン用のレビュー)
ニコン用 | キヤノン用 | |
モデル名 | 1.4/55 ZF.2 | 1.4/55 ZE |
使用ボディー | D800 | 5D Mark lll |
DxOMark スコア | 45 | 38 |
解像力 | 29 P-Mpix | 21 P-Mpix |
透過率 | 1.7 TStop | 1.5 TStop |
歪曲 | 0.2 % | 0.2 % |
周辺光量落ち | -1.6 EV | -1.8 EV |
色収差 | 6 μm | 6 μm |
ニコン用、キヤノン用ともDxOMark スコアは過去最高の数字だそうです。とくに解像力が素晴らしく、画像の中心から周辺までほぼ均一な先鋭さを保っているとのこと。色収差が少ないのも特徴。(注 : レンズについてのDxOMark スコアは、使用するボディーによって変わります)
以下、ニコン用のレビューのデジカメinfo 翻訳を引用させてもらいます。
『•Otus1.4/55のDxOMarkのスコア45、そして解像力のスコア29P-Mpixは、これまでのテストでベストの結果だ。このレンズは開放から隅々まで素晴らしく均一で、画面全域で解像力の低下は絞りにかかわらず5%未満だ。
•色収差は非常に少なく、そして歪曲も無視してよい値だ。周辺光量落ちはF4で解消するが、開放でさえ一番隅で-1.6EVで、大口径標準レンズとしては少ない。
•価格はユーザーをあきらめさせるほど高くはないかもしれないが、実際問題として、この大きなサイズとAFの非搭載は、このレンズをより制限する点かもしれない。』
ちなみに、Otus(オ―タス)とはフクロウの一種だそうです。ツァイスのレンズでは「鷲の目」と呼ばれたTessar(テッサー)が有名ですが、さしずめ今回のレンズは「フクロウの目」ということになるのでしょうか…
明るいレンズなので夜に強いことは確か。ツァイスのページに載っている作例(PDF)でも、夜のシーンに見るべきものがあるように思いました。
ビルの窓や街灯に色収差・パープルフリンジが全くと言っていいほど出ていません。これは驚くべきことです。おそらくこの1点だけでも、このレンズを使いたいというプロが出てくるのではないでしょうか。
ツァイスはボディーにニコンD800Eを使用した作例をたくさんflickr に載せていて(現時点で51枚)、とても参考になります。
建築物、ポートレートなどいずれも精細な画像。個人的には、映画のシーンを思わせる、この夜の群衆の写真 が気に入りました。(掲載写真はGrab the HTML/BBCode による画像リンク)
何のために人があつまっているのでしょう… それはともかく、陰影の微妙なディテールが素晴らしいと思いますが、どうでしょうか。
オリジナルのサイズ(7360×4912)に拡大してみても、街の灯りには色収差が出ていません。自然で、まさに完璧な描写。
一度でいいから、こんな写真を撮ってみたいですね~
カールツァイスが持てるレンズ技術を注ぎ込んだ、渾身の1本!
ああ、来春以降、試写するチャンスが巡って来ないでしょうか…
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