違法配信と知りながらインターネットのサイトから音楽や動画をダウンロードした場合、2年以下の懲役または200万円以下の罰金を科す改正著作権法が20日、参院本会議で可決、成立しました。
親告罪で、施行は10月1日。
違法アップロードはすでに刑事罰が科されることになっています。それをダウンロードするのも違法は違法でしたが、刑事罰がなかった。
今回、違法配信と知ってダウンロードする行為にも刑事罰が付きました。
ほかにもリッピングなどの規制ができましたが、それはそれとして、「YouTubeをみても違法ダウンロードになる可能性がある」というのでちょっと驚いているところです。
◇YouTubeで処罰も
ITmedia ニュース の『違法ダウンロードに刑事罰・著作権法改正で何が変わるか 壇弁護士に聞く』という記事。
「Winny裁判」で開発者側の弁護人を勤めた壇俊光弁護士(北尻総合法律事務所)へのインタビューです。
一部を引用させてもらうと、
『――YouTubeやニコニコ動画では、動画を一時ファイルとして保存しながら再生する「プログレッシブダウンロード」という方式が採られています。これは問題ないのでしょうか。
壇弁護士 現時点では手元に確定した改正条文がないので断言できませんが、「ダウンロード違法化」の段階であれば手段に制限はなかったので、そのままであればYouTubeなどのプログレッシブダウンロードも規制対象になると思われます。
- (編集部注 著作権法では、違法にアップロードされたファイルをPCなどに複製して保存する行為を違法ダウンロードとして禁じている。文化庁はYouTubeなどでの再生時キャッシュは著作権法上の複製に当たらず、違法動画を再生しても問題ないという見解を示しているが、条文の読み方によって解釈が変わるため「文化庁のそのような解釈は刑事実務では通用しない」という指摘もある。)
――YouTubeやニコニコ動画で作者が「ダウンロードOK」としたものなら、ダウンロードしても問題ないのですか。
壇弁護士 いいえ。作者が著作権処理をちゃんと行っているとは限らないので、「ダウンロードOK」と書いていた場合であっても、例えばこの作者の動画が他人の著作物を違法に使用しており、ダウンロードする人がそれが違法であることを認識していれば、処罰の対象となります。』
確かに、YouTubeを見ていると「これは違法アップロードかも」と推測されるようなものは結構多い。でもはっきり違法という確証をとれませんよね。その辺の線引きはどうなるのでしょう。
この記事でも、
『壇弁護士は、改正法が「警察によって恣意的に運用される可能性が高い」と指摘する。「いちいち警察が立件することは手間的に難しいので、警察が“けしからん”と判断した場合にだけ立件することになる。…(中略)…」という。』
としています。かなりあいまいなところがあるようです。親告罪でもあり、また量的にも、すべての違法ダウンロードを摘発できるはずもない…
と、考えると実際に法律の効果があるのかも疑問になってきます。
しかし、たとえば「イベントの映像が違法にYouTubeにアップされている!」と、音楽芸能関係者が強硬に訴え、警察が捜査に乗り出した場合、アップした人を逮捕した上、さらにダウンロードした人の情報をネット管理者から提出させ、一人ずつ摘発していくことも可能といえば可能。
「おまえはYouTubeを見ただろう!」と、警官が普通の家庭に上がりこんできたりして…
近未来小説のような超管理社会を思わせますね。まあ、そんな無茶なことにはならないでしょうが。
◇ネット時代に対応できていない
同じITmedia ニュース で、『「著作権は混迷」「ダメと言ってもネットは止まらない」──東大中山教授』という記事もあります。
『「著作権制度が想定していない状況に直面し、右往左往している」――東京大学の中山信弘教授が2月29日、「著作権リフォーム」をテーマにしたデジタルコンテンツ協会のシンポジウムで講演した。一般ユーザーが創作し、ネットで著作物を発表する現代に、プロを前提にした著作権制度が対応できなくなっていると指摘。著作物の流通を円滑化するための改革の必要性や、著作物を独占せず、広く共有しようという「コモンズ」の考え方などを紹介した。』
と書かれています。
このほかで面白かったは、YouTubeに出ている『ニコ生アゴラ 「著作権法改正は誰のため?」~「違法ダウンロード」 』という動画。長いですが、今回の著作権法改正のウラ話が出ていて参考になります。
私はといえば、どちらかというと著作者よりネット利用者の立場に近いですね。
ネットは基本的に自由であるべきだと思います。できるだけ規制されない方がいい。一方で、問題があるなら、それは改めるべきだとは思いますが、その場合なんでも規制して管理しようというのではなくて、柔軟な考え方に立って落ち着きどころを探していくべきでしょう。
◇「写り込み」はOKに
今回の改正では、写真や映像などに他人の著作物が写り込んでしまった場合でも著作権侵害にならないとする規定が整備されました。
たとえば映画のポスターや何かのキャラクターグッズが写り込んでしまった写真をブログやHPで公開しても、著作権侵害にはあたらないことになるわけです。
これはしごく当然のことで、いまさらとは思いながら、前向きの改正として評価したいと思います。
ほかにも著作権侵害にならない場合の規定が色々盛り込まれています。もともと、こちらが法改正の狙いで、リッピングとか違法ダウンロードの刑事罰などは、あとから関係業界のプッシュで付け加えられたようです。また、さほど論議も呼ばないままスルリと成立してしまうところに妙な感じを抱かされます。
それから、法律の条文が難解な悪文。これは何とかしてほしいですね。
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