側方小開胸アプローチによる低侵襲僧帽弁手術においては、横須賀市立うわまち病院心臓血管外科では三次元内視鏡を利用した鏡視下手術を実施していますが、上下大静脈脱血にするにあたり、別個に2本の脱血管を入れる方法と、大腿静脈経由で2ステージの脱血孔がついた脱血管を上大静脈まで挿入し、上大静脈と下大静脈の両方で脱血出来るものを利用する二つの方法があります。
後者の場合の利点は脱血管が1本で済むので、簡便で手術操作が少なくて済むことですが、右房内を太いシャフトの脱血管が横切って上大静脈に留置されるため、右側左房切開の天井部分を邪魔して左房内の展開が悪くなります。
完全鏡視下手術では、内視鏡で見えれば問題ないという考えもありますが、視野不良下での手術はクオリティの低下や手術時間の延長リスクがあります。やはり、良好な視野での手術を最優先とすることが手術成功の鍵であり、手術のクオリティを維持する大前提となると思われます。
横須賀市立うわまち病院では、2016年にMICSを始めたころには、基本的に直視下手術で2ステージの脱血管を採用していましたが、視野の悪さから別個に上大静脈に脱血管を入れる方式に変更しています。その後、三次元内視鏡を導入し僧帽弁操作部分を完全に鏡視下操作とするようになり、2ステージの脱血管でも操作が十分可能というエキスパートサージャンのすすめもあり、リバイバルしましたが、やはり視野の悪さは変わらない印象のため、上下の脱血管は分けて挿入する方が安全確実な方法であると確信しています。
手術の鉄則はやはり、良好な視野、に勝るものはありません。