横須賀総合医療センター心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

脈が飛ぶ とは? = 心拍の安全装置

2022-05-22 07:37:53 | 心臓病の治療
 期外収縮があると、正常の脈が抑制されて出てこないので、正常脈と期外収縮の間が短くなり、また期外収縮のあとの正常の脈は、期外収縮のために一回分お休みして一拍あけて次の正常の脈が出るので、期外収縮と正常脈の間が長くなって、これが脈が飛ぶ、という現象につながります。すなわち、洞結節は期外収縮が間に入っても、もともとあった脈のリズムを一拍みだされても維持する、ということになります。期外収縮は、音楽の調律でいえば、一瞬入る雑音のようなものですが、洞結節が奏でる音楽に影響をあたえないように主旋律が維持されている状況のようなもの、と考えるとどうかと思います(逆にわかりにくかったら申し訳ありません)。また、脈=心臓の電気的信号は早い者勝ちで、先に出た波形が優先されるので、無作為に勝手に出現する期外収縮の後は、正常の脈はお休みするという性質があり、これが脈の暴走を抑制する安全システムになっています。期外収縮を無視して、もし心臓が正常の脈を打ってしまうと、脈が重なってR ON Tと言われるような心室細動や心室頻拍などの致死的不整脈を引き起こすきっかけになってしまう可能性があります。そうならないように、邪魔に入ってきた不整脈を優先してしまう安全機構がもともとの心臓には備わっていると、筆者は理解しています(実は一般的な教科書にはこうした内容は記載が無いので、こういう説明をしている書物を持たことがありません)。

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 不整脈の出現は弁膜症手術が必要になる初期症状かどうか?

2022-05-22 07:34:11 | 心臓病の治療
 軽度の弁膜症がある患者さんで不整脈が出始めている場合、その初期症状の可能性がありますが、初期症状と言ってもそれ以上進行しない症例も多くありますので、期外収縮が出ているからと言って、かならずしも弁膜症手術が必要となる前兆とは言えません。

 期外収縮には上室性(おもに心房や洞結節などから発生する)と心室性があり、その波形から鑑別します。
 心室性期外収縮の場合は、Monofocalといっていつも同じ波形の期外収縮で連発がなければ今は一日あたりの発生数が多くても臨床的に問題ない=予後は不良ではない、と言われています。筆者が医師となった時代は心室性期外収縮が多いと早死にすると言われていて、一日あたり発生数をホルター心電図で測定し、その数を減らすように抗不整脈薬を内服させていましたが、現在は連発が出る、または出た可能性があるような意識消失発作がある、または弁膜症や心筋症などの基礎疾患があるなどの条件があって初めて抗不整脈薬の適応となっています。致死的不整脈の可能性がある場合は、現在は抗不整脈薬よりも植込み型除細動器を設置するほうが一般的かもしれません。
 上室性の場合は致死的不整脈に至る可能性は少ないので、抗不整脈薬や植込み型除細動器の適応となることはより少ないのですが、弁膜症の進行に比例して上室性不整脈が増加し、いずれ心房細動に至ってしまう可能性があるので、その場合は弁膜症手術のタイミングと考える場合があります。また、弁膜症など外科的治療の必要な原因がない場合で、発作性心房細動を起こした場合は抗凝固薬の適応となったり、カテーテルアブレーションを検討することになります。日本の場合は極端にカテーテルアブレーションをしたがる国、となっているようです。

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