若い女性の胃癌は予後が悪い。
若さ故健康への自信があるので、症状が強くなるまで診察を受けず、診断がついたときには進行癌であることが多い。
癌の組織型が、未分化型のことが多い。粘膜下へ広がりやすく、深達度が深いことが多い。リンパ節転移が多い。腹膜から再発してくることが多い。
などなど、理由はいくつか挙げられる。
しかし、現代の20代や30代は、いかにも若すぎる。
まさに幸せになろうとする時期。
しあわせいっぱいの時期。
子供にとってまだまだ母親の必要な時期。
ちょうどそんな時期なのである。
胃全摘を行った20代後半の新婚女性。
術中所見では、腹膜播種や肝転移も認めず、主病巣もそれほど大きなものではなかった。しかし、病理所見では、リンパ管への侵襲傾向が強く、58個の摘出リンパ節の内、20個に小さなリンパ節転移が認められた。
こうなってくると、郭清範囲より更に遠隔のリンパ節などに、検査で引っかからない小さな転移巣がすでに存在する可能性がある。
その点をご説明し、抗癌剤の投与を開始することとした。少なくとも6クールは施行する予定である。その間は、妊娠は控えて頂くことになる。
若いからといって、癌にならない保証などない。気になることがあれば、一度は検査を受けた方がよい。