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はせがわクリニック奮闘記

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脳神経細胞の新生

2013年11月18日 | 医学


著者の生田哲氏は1955年北海道生まれで、東京薬科大を卒業しています。
その後アメリカのイリノイ工科大学助教授として遺伝子の構造やドラッグデザインをテーマに研究生活を送り、
帰国後は多くの著書を執筆されています。心の病は食事で治す、ヒト遺伝子のしくみ、がんとDNA、脳の健康など.....

この本には、最近の脳神経学において、驚くべきパラダイムシフトが起きたことが記されています。
それは、”脳神経は新生する。”というものです。
1990年代ですので、つい最近のできごとです。

1913年、スペインの生んだ偉大な脳科学者であるラモン・カハールは「大人の脳は固定されたものであり、不変である」と述べました。
その7年前にノーベル賞を受賞した脳神経学会のドンの、この発言は、それから100年近くも常識とされてきました。
そもそも、細胞は皮膚にしろ肝臓にしろ、分裂して増えていくのが一般的です。
脳神経は分裂しないので増えることはないと信じられたようです。
しかし、実は脳には神経幹細胞という神経細胞やグリア細胞に成長することのできる細胞が存在したのです。
1980年代から90年代にかけて、まずカナリアで、次にマウスで、さらにサルで脳神経の新生が証明されました。
そして1996年から98年にかけて、臭化デキストリジウムを投与されていた末期癌患者5人の、脳の解剖所見から、
人間でも、脳神経の新生が確認されたのです。
臭化デキストリジウムは抗癌剤の効果を確認するために投与されていたのですが、新生した細胞に集積する性質があります。
そして、5人全員において、脳の海馬という部位に臭化デキストリジウムの集積が認められたのです。

私達は古い知識しか持ちませんでしたので、脳卒中で麻痺が残った患者さんには、
”死んでしまった神経細胞は生き返ることはないけれども、リハビリを頑張れば、その近くの、まだ使われていない神経細胞が
代わりの役目を果たすようになります。”と説明していました。
完全に間違いと思い込みの世界でした。

ところで、この、脳神経は新生するという見地に立って振り返ると、
8月5日にアップした、”自分の骨髄液で再生治療”の手技が、なるほどと思えてきます。
札幌医科大の先生は、”幹細胞の注射が、栄養因子として働いて、神経細胞を助けたり、血管を新生したり、神経細胞を
再生したりする”と、控えめに説明しておられますが、”幹細胞という原料を与えて脳神経の新生を促す”と表現しても
OKのように思われます。

数年後にはこの手技が脳卒中後遺症治療のスタンダードになりそうな予感がします。


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