六月の白い花
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タケノコが出る頃だと見当をつけて、梅が数本茂る草地に足を踏み入れた。
隣の竹藪から越境したハチクが、ぼつぼつ子孫を増やす季節である。
突然草むから飛び出したものがいる、一瞬その色合いから三毛猫かと思ったが、しかしそれが小鹿であることはすぐ判った。
明るい栗色の毛並みと、白い斑点 美しい「鹿の子斑」にただ呆然と立ち尽くした。
魅惑的な動物は草原を蹴って宙を飛び、竹の茂みの中に消えた、数秒間の出来事である。
この時から、鹿を敵だと思う心は、痕跡も残さずきれいに消えてしまった。
いかに訓練を積んだ動物写真家といえどもこの姿をカメラに収めることはできなかっただろう。
以前から「梅の木の下に小鹿のベットがあって、やわらかな草に小鹿の寝た跡がある」とかみさんが言っていた。
「小鹿を見たのかい」と私 「見たことはないけれど、あれは絶対小鹿の宿に違いない」とかみさん
小鹿の温もりの残る小さなベットを見ながら、女の人の勘の鋭さにただ恐れ入った。
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タケノコが出る頃だと見当をつけて、梅が数本茂る草地に足を踏み入れた。
隣の竹藪から越境したハチクが、ぼつぼつ子孫を増やす季節である。
突然草むから飛び出したものがいる、一瞬その色合いから三毛猫かと思ったが、しかしそれが小鹿であることはすぐ判った。
明るい栗色の毛並みと、白い斑点 美しい「鹿の子斑」にただ呆然と立ち尽くした。
魅惑的な動物は草原を蹴って宙を飛び、竹の茂みの中に消えた、数秒間の出来事である。
この時から、鹿を敵だと思う心は、痕跡も残さずきれいに消えてしまった。
いかに訓練を積んだ動物写真家といえどもこの姿をカメラに収めることはできなかっただろう。
以前から「梅の木の下に小鹿のベットがあって、やわらかな草に小鹿の寝た跡がある」とかみさんが言っていた。
「小鹿を見たのかい」と私 「見たことはないけれど、あれは絶対小鹿の宿に違いない」とかみさん
小鹿の温もりの残る小さなベットを見ながら、女の人の勘の鋭さにただ恐れ入った。