母の実家は信濃川の支流の支流である奈良井川に近かった。
明治40年(1907)の生れ、健在なら今年104歳になる。
その母が云った、奈良井川に大きな鮭が昇って来たと。
この川の緩やかな流れと、北アルプスの清らかな伏流水が湧出する環境を鮭が好んだのだろう。
新潟の河口から百数十キロを遡上し産卵して息絶える。
常念岳の頂に初雪が光るころ、海なし県の住人にとって、それは海神様からのビッグなプレゼントであっただろう。 「鮭影見ゆ」村人は総出で河岸に集まり、歓喜の声を上げて流れに飛び込んだものと思われる。 流域に発電用のダムがいくつもできて 鮭の遡上は途切れた。