裏山を尾根伝いに2時間ほど登り詰めると峠に着く。
秋の峠は空気が澄んでいて、山の彼方を彷彿とさせる展望が開けた。
普段、山に遮られて見ることができない景色が展開し、人家の影も見えない桔梗ケ原のその先にまた青い山並みが連なっていた。
桔梗ケ原は 有名な玄藩丞一家の狐達が住む広大な原野である。
中山道と北国街道をつなぎ、善光寺に善男善女を導いた北国西街道に沿って敷設された線路を走る汽車が、模型の様に小さく見えることもあった。
白い煙を後ろになびかせ松本方面に向かってゆっくり進んでいた。
そのころは、遠くの景色が手に取る様に見えるという双眼鏡にあこがれたものだ。