みせばや
一つの企業が清算に踏み切った。
要因は業績不振や放漫経営といえるものではない。
その企業は、昨年10月社長が急逝し、奥さんが経営を引き継ぎ、社業継承はスムーズに行くと思われた。
しかし ベテラン社員と新しい経営者の間に生まれた小さな亀裂は日を追って拡大し、6月に入ってついに首謀者の要求が暴発した。
首謀者は営業社員連名で、経営陣に即時退任を迫り、経営権の委譲要求を突き付けてきたのである
経営者はこの暴発に態度を硬化させ、交渉は平行線をたどった。
交渉の席で首謀者は常に冷静であったと云う、一方経営側は取り乱し、感情をあらわに時には激怒したらしい。
首謀者はその交渉課程を巧妙に歪曲し喧伝し、その結果、経営側は社員や得意先から、更に仕入先からも完全に孤立し、四面楚歌状況に陥った。
その時点で経営側は外部に向かって真実を伝える行動を起こさなかった。
8月に入り集団退職届けが提出され、日付は第一団が9月10日、第二団が9月20付けであった。
9月末 彼らから丁重な新会社設立の案内が私宛に届いた。
設 立 9月 1日
営業開始 9月21日
何のことはない、彼らは旧会社に在職中から総力を挙げて新会社設立に向け奔走していたのである。
抜けがらとなった会社は清算準備に入った。